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令和2年10月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第4165号地位確認等請求事件
口頭弁論終結日令和2年7月15日
判決
主文5
1被告は,原告甲に対し,下記⑴ないし⑶の金員を支払え。
⑴50万0853円及びこれに対する平成28年9月14日から支払済みま
で年5%の割合による金員
⑵263万9521円及び別表1のA-2ないしA-5,A-9ないしA-1
1に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。)の10
「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年5%
の割合による金員
⑶41万0298円並びにうち6万1799円に対する平成28年1月1日
から,うち5万7599円に対する同年8月1日から,うち6万9776円に
対する平成29年1月1日から,うち6万9299円に対する同年8月1日か15
ら,うち6万9776円に対する平成30年1月1日から,及びうち8万20
49円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員
2被告は,原告乙に対し,下記⑴及び⑵の金員を支払え。
⑴220万3111円及び別表2のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,
B-16及びB-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対20
する各翌月16日から各支払済みまで年5%の割合による金員
⑵50万1109円並びに,うち7万7361円に対する平成28年1月1日
から,うち7万5645円に対する同年8月1日から,うち6万1225円に
対する平成29年1月1日から,うち5万9625円に対する同年8月1日か
ら,うち5万6225円に対する平成30年1月1日から,うち5万892525
円に対する同年8月1日から,うち4万8043円に対する平成31年1月1
日から,及びうち6万4060円に対する令和元年8月1日から,各支払済み
まで年5%の割合による金員
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,原告甲と被告との関係では,これを10分し,その7を原告甲の
負担とし,その余を被告の負担とし,原告乙と被告との関係では,これを4分し,5
その3を原告乙の負担とし,その余を被告の負担とする。
5この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1原告甲関係10
⑴主位的請求
ア被告は,原告甲に対し,341万3614円及び別表3のA-9ないしA
-11に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月1
6日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
イ被告は,原告甲に対し,385万9142円及び別表3のA-2ないしA15
-5に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。)
の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年
6%の割合による金員を支払え。
ウ被告は,原告甲に対し,325万4475円及びこれに対する平成28年
9月14日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。20
エ被告は,原告甲に対し,85万4596円並びにうち21万7900円に
対する平成29年1月1日から,うち20万1223円に対する同年8月1
日から,うち21万9700円に対する平成30年1月1日から,及びうち
21万5773円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6%の割合
による金員を支払え。25
⑵予備的請求
ア被告は,原告甲に対し,341万3614円及び別表3のA-9ないしA
-11に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月1
6日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
イ被告は,原告甲に対し,385万9142円及び別表3のA-2ないしA
-5に記載された,各月(ただし,平成26年4月分から同年7月分は除く。)5
の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16日から各支払済みまで年
5%の割合による金員を支払え。
ウ被告は,原告甲に対し,125万8942円並びにうち21万4823円
に対する平成28年1月1日から,うち18万9523円に対する同年8月
1日から,うち21万7900円に対する平成29年1月1日から,うち210
0万1223円に対する同年8月1日から,うち21万9700円に対する
平成30年1月1日から,及びうち21万5773円に対する同年8月1日
から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2原告乙関係
⑴主位的請求15
ア被告は,原告乙に対し,183万6500円並びに別表4のB-16及び
B-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月
16日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
イ被告は,原告乙に対し,314万9179円及び別表4のB-7ないしB
-9に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月1620
日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
ウ被告は,原告乙に対し,245万1388円及び別表4のB-1ないしB
-3に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16
日から各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
エ被告は,原告乙に対し,100万円及びこれに対する平成28年9月1425
日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
オ被告は,原告乙に対し,85万1500円並びに,うち22万2300円
に対する平成29年1月1日から,うち20万4500円に対する同年8月
1日から,うち21万9100円に対する平成30年1月1日から,及びう
ち20万5600円に対する同年8月1日から,各支払済みまで年6%の割
合による金員を支払え。5
カ被告は,原告乙に対し,45万4600円並びに,うち23万2000円
に対する平成31年1月1日から,及びうち22万2600円に対する令和
元年8月1日から,各支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
⑵予備的請求
ア被告は,原告乙に対し,183万6500円並びに別表4のB-16及び10
B-17に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月
16日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
イ被告は,原告乙に対し,314万9179円及び別表4のB-7ないしB
-9に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16
日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。15
ウ被告は,原告乙に対し,245万1388円及び別表4のB-1ないしB
-3に記載された,各月の「差額」の「合計」欄の金額に対する各翌月16
日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
エ被告は,原告乙に対し,131万5356円並びに,うち24万3336
円に対する平成28年1月1日から,うち22万0520円に対する同年820
月1日から,うち22万2300円に対する平成29年1月1日から,うち
20万4500円に対する同年8月1日から,うち21万9100円に対す
る平成30年1月1日から,及びうち20万5600円に対する同年8月1
日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
オ被告は,原告乙に対し,45万4600円並びに,うち23万2000円25
に対する平成31年1月1日から,及びうち22万2600円に対する令和
元年8月1日から,各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要等
1事案の概要5
本件は,自動車学校の経営等を目的とする株式会社である被告を定年退職した
後に,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を被告と締結
して就労していた原告らが,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」
という。)を被告と締結している従業員(以下「正職員」という。)との間に,労
働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違10
反する労働条件の相違があると主張して,被告に対し,以下の金員の支払を求め
た事案である。
⑴原告甲について
ア主位的請求
正職員に適用される就業規則等が原告甲にも適用されることを前提に,15
労働契約に基づき,平成26年8月から平成30年6月の間の本来支給さ
れるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する各支払
期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率(平成29年法律第44号附
則17条3項により平成29年法律第45号による改正前のもの。以下同
じ。)の年6%の割合による遅延損害金(主位的請求ア及びイ)20
労働契約法20条違反の労働条件の適用という不法行為に基づく損害
賠償として,平成25年8月から平成26年7月の間の本来支給されるべ
き賃金と実際に支給された賃金との差額175万4475円及びこれに
対する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から各支払済みま
で民法(平成29年法律第44号附則17条3項により同法による改正前25
のもの。以下同じ。)所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求
ウ)
前記不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料150万円及びこれに対
する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から支払済みまで民
法所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求ウ)
正職員に適用される就業規則等が原告甲にも適用されることを前提に,5
労働契約に基づき,平成28年年末から平成30年夏の間の本来支給され
るべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期
日の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延
損害金(主位的請求エ)
イ予備的請求10
前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年8月から平成30年
6月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及
びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%
の割合による遅延損害金(予備的請求ア及びイ)
前記不法行為に基づく損害賠償として,平成27年年末から平成30年15
夏の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及び
これに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで民法所定の年5%
の割合による遅延損害金(予備的請求ウ)
⑵原告乙について
ア主位的請求20
正職員に適用される就業規則等が原告乙にも適用されることを前提に,
労働契約に基づき,平成26年10月から令和元年9月の間の本来支給さ
れるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する各支払
期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延
損害金(主位的請求アないしウ)25
前記不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料100万円及びこれに対
する本件訴訟提起の日である平成28年9月14日から支払済みまで民
法所定の年5%の割合による遅延損害金(主位的請求エ)
正職員に適用される就業規則等が原告乙にも適用されることを前提に,
労働契約に基づき,平成28年年末から令和元年夏の間の本来支給される
べき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこれに対する各支払期日5
の後の日から各支払済みまで商事法定利率の年6%の割合による遅延損
害金(主位的請求オ及びカ)
イ予備的請求
前記不法行為に基づく損害賠償として,平成26年10月から令和元年
9月の間の本来支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及10
びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5%
の割合による遅延損害金(予備的請求アないしウ)
前記不法行為に基づく損害賠償として,平成27年年末から令和元年夏
の間の本来支給されるべき賞与と実際に支給された賞与との差額及びこ
れに対する各支払期日の後の日から各支払済みまで民法所定の年5%の15
割合による遅延損害金(予備的請求エ及びオ)
2前提事実(末尾に証拠等を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)
⑴当事者
ア被告は,自動車学校の経営等を目的とする株式会社であり,肩書所在地に
主たる事業所(本部)を設置するほか,自動車教習施設として,春日井校(愛20
知県春日井市所在),港校(名古屋市港区所在)及び天白校(名古屋市天白区
所在)を設置している。
イ原告甲は,昭和51年頃,被告と無期労働契約を締結して教習指導員(正
職員)として就労を開始し,平成11年からは春日井校で勤務していた。
ウ原告乙は,昭和55年,被告と無期労働契約を締結して教習指導員(正職25
員)として就労を開始し,昭和63年からは春日井校で勤務していた。
⑵被告における正職員の労働条件等
ア被告における正職員の労働条件については,正職員に適用される就業規則
及び給与規程(以下「正職員就業規則等」という。)に定められている(以下
では,正職員のうち教習指導員の業務を担当していた者について検討するこ
とから,「正職員」と記載する場合は当該業務を担当する者を指すこととす5
る。)。(甲3,5)
イ正職員の労働条件として本件に関連するものは,以下のとおりである。
毎月の賃金
被告は,正職員に対し,毎月末日締め翌月15日支払で賃金を支払って
いる。毎月の賃金は,基本給,役付手当,家族手当,皆精勤手当,敢闘賞10
等で構成されるところ,それぞれの趣旨や支給基準は以下のとおりである。
(甲5)
a基本給
一律給と功績給により構成される。
b役付手当15
正職員が主任以上の役職に就いている場合,当該役職の区分に応じて
支給する。
c家族手当
正職員が,①所得税法上の控除対象配偶者,②満20歳未満で所得税
法上の扶養親族に該当する子女を扶養家族とする場合,その人数に応じ20
て支給する。
d皆精勤手当
正職員が所定内労働時間を欠略なく勤務した場合に支給する。
e敢闘賞
施設ごとに定めた基準に基づき,正職員が1か月に担当した技能教習25
等の時間数に応じ,職務精励の趣旨で支給する。
賞与
被告は,正職員に対し,毎年,夏季及び年末の2回,賞与を支給してお
り,夏季分は毎年7月末までに,年末分は毎年12月末までに支払うこと
としている。各季の賞与は,各季で正職員一律に設定される掛け率を各正
職員の基本給に乗じ,さらに当該正職員の勤務評定分(10段階)を加算5
する方法で算定される。各季の掛け率及び勤務評定分は以下のとおりであ
る。(弁論の全趣旨)
a平成25年年末
掛け率は1.385,勤務評定分は0円から5万円である。
b平成26年夏季10
掛け率は1.385,勤務評定分は0円から4万2000円である。
c平成26年年末
掛け率は1.385,勤務評定分は0円から5万5000円である。
d平成27年夏季
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。15
e平成27年年末
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。
f平成28年夏季
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。
g平成28年年末20
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。
h平成29年夏季
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万2000円である。
i平成29年年末
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から7万2000円である。25
j平成30年夏季
掛け率は1.5,勤務評定分は0円から5万4000円である。
k平成30年年末
掛け率は1.55,勤務評定分は0円から8万7000円である。
l令和元年夏季
掛け率は1.6,勤務評定分は0円から6万円である。5
定年制
正職員は満60歳が定年であり,定年に達した日の翌日に退職となる。
(甲3)
⑶被告における定年退職後再雇用者の労働条件等
ア被告は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。)10
9条の高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を採用しており,定年退職
した正職員のうち再雇用を希望する者については,嘱託職員として期間1年
間の有期労働契約を締結し,これを更新することで原則として65歳まで再
雇用することとしている(以下では,嘱託職員のうち定年後再雇用の者につ
いて検討することから,「嘱託職員」と記載する場合は定年後再雇用の者を15
指すこととする。)。(甲10)
イ嘱託職員の労働条件は,正職員とは別に設けられた嘱託規程に定められて
いる。なお,嘱託規程は,嘱託職員の労働条件について,嘱託規程に定めの
ない事項については正職員就業規則等を準用するが,実態に合わない場合,
不都合と判断される場合,正職員就業規則等にも定めがない場合は,その都20
度定めるものとしている。(甲10)
ウ嘱託規程は,嘱託職員の賃金体系は勤務形態によりその都度決め,賃金額
は本人の経歴,年齢その他の実態を考慮して決めるものとしている。また,
嘱託規程は,賞与について,嘱託職員に対しては原則として支給しないが,
正職員の賞与とは別に勤務成績を勘案して支給することがあるとしている。25
(甲10)
エ被告は,定年予定の正職員に対し,以下の手続により再雇用希望の有無の
確認,労働条件の確認及び労働契約の締結を行っている。また,嘱託職員が
有期労働契約を更新する際にも,同様の手続が採られている。(甲4,弁論の
全趣旨)
被告は,定年予定の正職員に対し,定年後再雇用の希望の有無を確認し,5
当該正職員は,再雇用を希望する場合,被告に対し,その旨を記載した書
面を提出する。
被告は,再雇用を希望する正職員に対し,定年の3か月前までに(有期
労働契約の更新の場合は,期間満了の2か月前までに),再雇用の際の賃
金等を含む労働条件を記載した通知書を送付し,正職員は,当該労働条件10
に同意する場合,当該通知書に署名押印の上,被告に提出する。
再雇用を希望する正職員と被告は,再雇用期間が開始する前に,改めて
嘱託職員としての有期労働契約の契約書を作成する。
オ嘱託規程は,定年退職時に役職にある者については,役職を退任した上で
再雇用するものとしている。15
⑷原告らの定年退職及び再雇用
ア原告甲は,平成●年●月●日,正職員を定年となったが,それに先立って,
前記⑶エの手順を経て,被告との間で嘱託職員としての有期労働契約を締結
することに合意し,同月●日から嘱託職員として勤務を開始した。原告甲は,
その後,被告との間で,前記⑶エと同様の手順を経て,嘱託職員としての有20
期労働契約を数回更新して勤務を継続し,平成30年7月9日,被告を退職
した。なお,原告甲は,定年退職時,主任の役職にあったが,定年時にこれ
を退任し,嘱託職員となってからは役職に就いていない。(弁論の全趣旨)
イ原告乙は,平成●年●月●日,正職員を定年となったが,それに先立って,
前記⑶エの手順を経て,被告との間で嘱託職員としての有期労働契約を締結25
することに合意し,同月●日から嘱託職員として勤務を開始した。原告乙は,
その後,被告との間で,前記⑶エと同様の手順を経て,嘱託職員としての有
期労働契約を数回更新して勤務を継続し,令和元年9月30日,被告を退職
した。なお,原告乙は,定年退職時,主任の役職にあったが,定年時にこれ
を退任し,嘱託職員となってからは役職に就いていない。(弁論の全趣旨)
⑸原告らの定年退職時及び嘱託職員時の賃金5
ア原告甲の定年退職直前の賃金に係る労働条件(役付手当を除く。)を平成
25年8月分以降の原告甲の勤務状況に当てはめた場合,毎月の賃金は,別
表3のA-1ないしA-5及びA-9ないしA-11の各月の「定年前の金
額」欄に記載のとおりとなる。他方,原告甲が平成25年8月分以降,被告
を退職するまでの間に被告から支払を受けていた毎月の賃金は,別表3のA10
-1ないしA-5及びA-9ないしA-11の各月の「支給額」欄に記載の
とおりであり,基本給,皆精勤手当及び敢闘賞は,正職員定年退職時に比べ
減額して支給され(平成26年8月分からは,皆精勤手当と敢闘賞が統合さ
れ,これらと同趣旨の精励手当が支給された。),役付手当及び家族手当は,
支給されず,残業手当は,これら支給額を前提に算定され支給された。15
イ原告乙の定年退職直前の賃金に係る労働条件(役付手当を除く。)を平成
26年10月分以降の原告乙の勤務状況に当てはめた場合,毎月の賃金は,
別表4のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,B-16及びB-17
の各月の「定年前の金額」欄に記載のとおりとなる。他方,原告乙が平成2
6年10月分以降,被告を退職するまでの間に被告から支払を受けていた毎20
月の賃金は,別表4のB-1ないしB-3,B-7ないしB-9,B-16
及びB-17の各月の「支給額」欄に記載のとおりであり,基本給は,正職
員定年退職時に比べ減額して支給され,皆精勤手当及び敢闘賞は,精励手当
に統合された上,正職員定年退職時に比べ減額して支給され,役付手当(平
成26年10月は除く。)及び家族手当は,支給されず,残業手当は,これら25
支給額を前提に算定され支給された。
ウ残業手当について,本件訴訟においては,以下のとおり算定することで当
事者間に争いはない。
正職員時
(基本給+役付手当+指導手当+皆精勤手当+1万1000円)÷17
3×1.25×残業時間5
嘱託職員時
(基本給+役付手当+指導手当+皆精勤手当(又は精励手当)+1万1
000円)÷173×1.25×残業時間
前記及びの「1万1000円」は,別表3及び4の対象月の「残業
計算(敢闘賞)」欄に記載がある月のみ加算する。10
エ原告らが被告との間で締結した嘱託職員としての有期労働契約の契約書
は,いずれも「臨時に支払う給与」(以下「嘱託職員一時金」という。)を正
職員の賞与とは別に,勤務成績等を考慮の上支給することがあるとしている。
原告甲が嘱託職員となって以降,被告を退職するまでの間に被告から支払
を受けていた嘱託職員一時金は,別表3のA-7及びA-13の各季の「支15
給額」欄に記載のとおりで,原告乙が嘱託職員となって以降,被告を退職す
るまでの間に被告から支払を受けていた嘱託職員一時金は,別表4のB-5,
B-11及びB-13の各季の「支給額」欄に記載のとおりであった。被告
は,これら嘱託職員一時金を正職員の賞与と同時期に支払っていた。
⑹原告らの職務内容20
原告らは,いずれも,正職員を定年退職し嘱託職員となって以降も,従前と
同様に春日井校で教習指導員として勤務をしており,再雇用に当たり主任の役
職を退任したことを除いて,定年退職の前後で,その業務の内容及び当該業務
に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)並びに当該職務の内容及び配
置の変更の範囲(以下,「職務の内容」と併せて「職務内容及び変更範囲」とい25
う。)に相違はなかった。
3争点及び当事者の主張
本件の争点は,①原告らの嘱託職員としての労働条件と正職員の労働条件の間
に労働契約法20条に違反する相違があるかどうか(争点1),②労働契約法2
0条に違反する労働条件の相違があるとして,労働契約に基づき差額賃金を請求
することができるかどうか(争点2),③労働契約法20条に違反する労働条件5
の相違があるとして,不法行為に基づく損害賠償を請求することができるかどう
か及びその場合の損害額(争点3)であり,当事者の主張は以下のとおりである。
⑴労働契約法20条に違反する相違の有無(争点1)
(原告らの主張)
ア不合理性の判断方法について10
労働契約法20条のいう不合理な相違であるかどうかの判断方法は,問
題となる労働条件の性質によって,二通りに分かれる。すなわち,職務内
容及び変更範囲その他の事情(以下,併せて「職務の内容等」という。)と
関連性がない労働条件の場合には,使用者との間で無期労働契約を締結し
ている者(以下「無期契約労働者」という。)と,有期労働契約を締結して15
いる者(以下「有期契約労働者」という。)との間で同一の待遇が求められ,
異なる待遇は不合理となり(均等審査),職務の内容等と関連性がある労
働条件の場合には,無期契約労働者と有期契約労働者の間の前提条件の相
違と均衡する待遇が求められ,均衡しない待遇は不合理となる(均衡審査)
と解すべきである。20
本件では,職務内容及び変更範囲には相違がなく,「その他の事情」とし
て定年後再雇用であることが考慮されることとなるため,定年後再雇用と
関連性がない労働条件の場合には,嘱託職員と正職員との間で同一の待遇
が求められ,定年後再雇用と関連性がある労働条件の場合には,嘱託職員
と正職員の間の前提条件の相違と均衡する待遇が求められる。25
労働契約法20条は,労働条件の相違の不合理性を判断する際の考慮要
素として,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,
③「その他の事情」を挙げている(職務の内容等)。このうち,③「その他
の事情」については,上記①及び②(職務内容及び変更範囲)に関連する
事情に限定する必要はないが,労働契約法20条が当該①及び②を考慮要
素として明示していることからすれば,当該①及び②に相違がないのであ5
れば,③「その他の事情」を理由として,両者の間に労働条件に相違を設
けるには,「相応の理由」が必要であると解すべきである。
本件では,職務内容及び変更範囲には相違がないため,③「その他の事
情」である定年後再雇用を理由として両者の間の労働条件の相違の不合理
性を否定するには,「相応の理由」が必要である。10
定年後再雇用であることを「その他の事情」として考慮するにしても,
労働契約法20条のいう不合理な相違であるかどうかを判断するに際し
ては,飽くまで,個別企業における個別の賃金項目の趣旨や性質(必要に
応じて賃金総額を参照する。)に基づくべきであり,定年後再雇用であれ
ばその賃金を切り下げることが社会一般に容認されているなどという考15
慮をすべきではない。
イ個別の賃金項目の検討等
本件では,以下のとおり,労働契約法20条のいう不合理な相違が認めら
れる(役付手当の不支給については労働契約法20条違反を主張しない。)。
基本給について20
被告は,正職員及び嘱託職員のいずれにも基本給を支給しているところ,
その計算方法は,明らかではなく,実際のところ,被告は,明確な基準に
よらずに一方的に決定した金額を基本給として支給している。このような
実態に照らすと,被告は,基本給を支給するに当たって,正職員と嘱託職
員で異なる扱いをしていなかったといえる。しかし,被告は,原告甲に対25
し,正職員定年退職時の40%台前半,原告乙に対し,正職員定年退職時
の45%ほどの基本給しか支給していない。そして,被告が,原告らの基
本給にこれほどの減額が生じることに対し,配慮やこれを緩和する工夫を
行った形跡はなく,原告らの所属する労働組合との間で,嘱託職員の労働
条件について労使交渉を行った事実もない。そうすると,上記のような基
本給の相違が生じることについて相応の理由があったとはいえず,当該相5
違は,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。
皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について
皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)は,その支給要件及び内容に照らす
と,被告の教習指導員に対し,所定労働時間を欠略なく出勤すること及び
多くの指導業務に就くことを奨励する趣旨で支給されるものであるとこ10
ろ,嘱託職員と正職員の間で,このような奨励を行う必要性に相違はない。
そうすると,精励手当は,定年後再雇用と関連しない賃金項目であり,嘱
託職員に対し,正職員より減額して支給することは,労働契約法20条に
違反する不合理な相違である。
家族手当について15
家族手当は,その支給要件として客観的な基準が明示されており,正職
員であってもその基準に該当しない場合には支給がされないものである。
そうすると,家族手当は,定年後再雇用と関連しない賃金項目であり,基
準を満たす正職員には支給する一方,嘱託職員には一律支給しないとする
ことは,労働契約法20条に違反する不合理な相違である。20
賞与について
被告は,原告ら嘱託職員に対しては,正職員に対する賞与と同趣旨で嘱
託職員一時金を支給している。そして,賞与及び嘱託職員一時金は,基本
給と併せて労働者の生活保障給の趣旨を有するところ,このような場合,
支給の有無及び額について,使用者の裁量の幅は減縮あるいは消滅すると25
解すべきであるから,正職員の賞与と比較して嘱託職員の嘱託職員一時金
がわずかな額にとどまることは,労働契約法20条に違反する不合理な相
違である。
老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金について
原告らは,いずれも,老齢厚生年金(比例報酬分)及び高年齢雇用継続
基本給付金を受給しているものの,これらを加えても,正職員定年退職時5
の賃金総額の70%を受給していたにとどまり,そのような状態を正当化
できる事情は存しない。そうすると,原告らが老齢厚生年金(比例報酬分)
及び高年齢雇用継続基本給付金を受給していることを踏まえ,賃金総額の
観点から検討しても,前記で検討した相違は,なお不合理である。
ウ正職員定年退職時と比較することについて10
原告らは,前記のとおり,嘱託職員としての労働条件と正職員定年退職
時の労働条件を比較するものである。一般的に,企業は,賃金制度を定め
て労務管理を行っており,特に,無期契約労働者について年齢や勤続年数
に基づいて一定の昇給があることを前提とした制度が存する場合,労働契
約法20条のいう不合理な相違があるかどうかを判断する際には,当該制15
度を踏まえて比較対象者を選定する必要がある。よって,そのような場合,
定年退職直前の無期契約労働者の労働条件と定年退職後の有期契約労働
者の労働条件を単純に比較することはできないとの批判があり得る。しか
し,被告は,そのような合理的な賃金制度を定めておらず,雇用時の賃金
額並びに,昇給の有無及びその額を専ら裁量により決定しており,制度を20
踏まえた比較対象者の選定をすることができない。そうすると,原告らの
ように,被告を定年退職後に嘱託職員となった労働者について,正職員と
の間で,労働条件に関して労働契約法20条のいう不合理な相違があるか
どうかを検討するに当たっては,正職員定年退職時の当該労働者の労働条
件と比較するしかない。25
なお,原告らの嘱託職員としての労働条件を正職員定年退職時の労働条
件と比較した場合の相違は,現在被告で勤務している別の正職員(以下「正
職員F」という。)の労働条件と比較した場合の相違より小さいものであ
る。すなわち,原告らの請求は控えめな請求であるといえ,その意味でも,
原告らの請求は認められるべきである。
(被告の主張)5
ア不合理性の判断方法について
労働契約法20条は,不合理性判断の考慮要素として,①職務の内容,②
当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか,③「その他の事情」を挙げて
おり(職務の内容等),③「その他の事情」には,不合理性を主張する労働者
が定年後再雇用者であることも含まれる。よって,たとえ,正職員と嘱託職10
員の間で,上記①及び②(職務内容及び変更範囲)に違いがないとしても,
それをもって直ちに両者の賃金の相違が不合理となるものではない。
イ個別の賃金項目の検討等
基本給について
以下のとおり,原告らの嘱託職員時の基本給と正職員定年退職時の基本15
給に相違があったとしても,これは労働契約法20条に違反する相違とは
いえない。
a基本給は,社会の好不況,会社の業績,労働者の勤務実績等の諸要素を
総合した総合決定給であり,各種手当のように,その趣旨が明らかなも
のとは異なる。嘱託職員としての基本給が正職員時の基本給と比較して20
何割を下回れば不合理であるなどと判断することは,私的自治の原則に
反する行為である。
b被告は,定年退職が予定されている正職員に対し,事前に定年後再雇
用の意向の有無を確認し,再雇用を求める者に対し労働条件を提示して
おり,これに同意した者が嘱託職員となるのである。原告らはいずれも,25
このような経過を経て,基本給を含む労働条件についても合意の上,嘱
託職員となっており,決して被告が一方的に定めた労働条件に従ってい
るわけではない。以上の経過は,翌年以降も同様であり,原告らは,労
働条件に同意の上,嘱託職員としての勤務を継続していた。また,原告
らは,労働組合の構成員として,被告との間で様々な事項について何度
も団体交渉を行っていた。そのような原告らが,嘱託職員としての賃金5
に納得していなかったのであれば,被告に団体交渉を求めないはずがな
いところ,そのような事実はない。
c企業は,定年後再雇用の労働者に対し労働条件を提案するに当たり,
①当該労働者が,本来,60歳で定年退職するはずであったこと,②そ
れにもかかわらず,国の政策ミスにより企業が65歳まで雇用せざるを10
得なくなったこと,③企業の資金には限りがあること,④当該労働者が
退職金を受領していること,⑤当該労働者が高年齢雇用継続基本給付金
を受給していること,⑥定年退職した労働者より,将来,企業の中心と
なってその発展に尽力する者を育成したいこと等を考慮するものであ
り,これ自体は,不合理と判断されるようなものではない。15
d被告は,半期に一度,嘱託職員に嘱託職員一時金を支給しているとこ
ろ,これは,正職員の賞与とはその趣旨を異にし,飽くまで毎月の賃金
(基本給)の調整のために支給するいわゆる調整給である。よって,嘱
託職員と正職員の基本給を比較するに当たり,嘱託職員の基本給につい
ては,毎月の支給分だけでなく,①毎月分の高年齢雇用継続基本給付金20
及び②嘱託職員一時金の年間合計を12等分した額を加算した結果を
用いるべきである。
e原告らの嘱託職員としての毎月の基本給に当月分の高年齢雇用継続
基本給付金を加算すると,原告らは,いずれも,正職員定年退職時の毎
月の基本給の60%前後を確保している。また,原告らの嘱託職員とし25
ての毎月の基本給に前記dを加算した結果は,原告らいずれについても,
教習指導員の有資格者のうち勤続年数5年未満の者の基本給の平均額
とほとんど変わらず,むしろ高額な月も存在する。
f雇用保険法による高年齢雇用継続基本給付金制度は,再雇用時の賃金
が60歳時点の賃金の75%以下にならなければ給付金が支給されな
いこととしている。加えて,上記制度は,再雇用時の賃金が60歳時点5
の賃金の61%以下になり得ることまで予定している。
皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について
被告は,これらを清算することについて吝かではない。
家族手当について
被告は,正職員が扶養家族の生活費や子女の教育費等で負担が多いと考10
えられる現役世代であることから,その福利厚生を主目的として,家族手
当を支給しているのであるから,定年後の嘱託職員に対してこれを支給し
ないことは,不合理ではない。
賞与について
賞与は,会社に長く勤めてもらうために政策的に支給する意味合いのも15
のであり,長期間の雇用が予定されていない嘱託職員に対してこれを支給
しないことも,不合理ではない。なお,前記のとおり,被告は,嘱託職員
との間で賞与を支給する旨の合意をしておらず,嘱託職員に対して支給し
ている嘱託職員一時金は,正職員の賞与とは別物のいわゆる調整給であり,
その趣旨を異にする。20
ウ正職員定年退職時との比較について
被告を含む年功序列制度を採用する会社においては,定年退職直前の賃
金が最も高額になるところ,これは,その時々における実際の貢献度と一
致するものではない。よって,嘱託職員の労働条件と定年退職直前の労働
条件を比較することに意味はない。25
なお,原告らは,現在被告で勤務している正職員Fの労働条件との差額
に言及するが,当該正職員は,原告らとは勤務開始日も能力も異なるし,
さらに,定年退職時期が迫った者でもあるから,原告らの労働条件と比較
することに意味はない。
⑵労働契約に基づく差額賃金請求の可否(争点2)
(原告らの主張)5
ア労働契約法20条は,私法上の効力を有する強行規定であるから,同条に
違反する労働条件の定めは,無効になる。労働契約法20条違反の効力とし
て,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件により自動的に
代替されること(直律的効力)を認めることは困難であるものの,合理的解
釈を行うことで,有期契約労働者に対して無期契約労働者の労働条件を定め10
た就業規則等を適用できるのであれば,無期契約労働者の労働条件を有期契
約労働者に適用する余地がある。
イ嘱託規程は,嘱託職員の労働条件について,嘱託規程に定めのない事項に
ついては正職員就業規則等を準用することとしており,嘱託職員の労働条件
が労働契約法20条により無効となった場合,その無効となった部分は,「嘱15
託規程に定めのない事項」となるため,正職員就業規則等が準用されること
となる。よって,原告らについては,役付手当を除き正職員と同様の基準及
び計算方法により算定された賃金請求権が生じており,被告は,原告らに対
する支給額との差額を未払賃金として支払う必要がある。
なお,賞与については,平成25年年末分から平成26年年末分までは,20
原告乙及び正職員Fに対する支給額の平均額を,平成27年夏季分から令和
元年夏季分までは正職員Fに対する支給額を正職員と同様の基準及び計算
方法により算定された額(別表3のA-7及びA-13,並びに別表4のB
-5,B-11,B-13に記載された「定年前の金額」欄の金額)とする
のが相当である。25
(被告の主張)
ア被告においては,正職員に適用される賃金体系と嘱託職員に適用される賃
金体系は,別個のものであり,原告ら嘱託職員の労働条件に正職員との間で
労働契約法20条に違反する相違があったとしても,嘱託職員に対して正職
員就業規則等が適用されることはない。
イ原告らは,嘱託規程のうち正職員就業規則等を準用する規定を指摘するも5
のの,嘱託規程は,嘱託職員に対する処遇を明確に規定しているのであるか
ら,嘱託職員の賃金等は,嘱託規程に定めがない事項ではない。また,嘱託
規程は,実態に合わない場合,不都合と判断される場合,(中略)その都度決
めるものとするとも定めている。そうすると,原告ら嘱託職員に対し,正職
員就業規則等を適用する余地はない。10
⑶不法行為に基づく損害賠償請求の可否及び損害額(争点3)
(原告らの主張)
ア仮に労働契約に基づく差額賃金請求が認められないとしても,労働契約法
20条は,私法上の効力を有する強行規定であり,同条に違反する取扱いは,
不法行為となる。そしてその損害を算定するに当たっては,労働契約法2015
条の「不合理」の意味を踏まえる必要がある。すなわち,上記「不合理」に
は,①正職員と同一内容でないことをもって直ちに不合理であると認められ
る労働条件(均等審査の労働条件)と,②正職員との相違の程度によって不
合理と認められる労働条件(均衡審査の労働条件)があるところ,①につい
ては差額全額が損害となり,②については嘱託職員の労働条件と「相応の理20
由」のある労働条件との差額が損害となるというべきである。
イ以上を本件に当てはめると,前記ア①に該当する皆精勤手当及び敢闘賞
(精励手当)並びに家族手当の差額全額が損害となることはもちろんのこと,
前記ア②に該当する基本給及び賞与の差額には,前記⑴で検討したように,
これを正当化できる相応の理由が認められない。そうすると,原告らの損害25
は,老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金が支給されていることを踏
まえ,裁判所に一定の裁量が認められるとしても,基本的には,役付手当を
除き正職員と同様の基準及び計算方法で算定された賃金額と現に支払われ
た賃金額の差額であると解するべきである(賞与については,前記⑵(原告
らの主張)イ記載のとおりである。)。
ウまた,被告は,労働契約法20条に違反する違法な取扱いを行い,原告ら5
の経験や知識を不当に安価でいわば買い叩いたのであり,原告らは,多大な
精神的損害を被った。上記損害を金銭に換算すれば,原告甲については15
0万円,原告乙については100万円を下らない。
(被告の主張)
ア皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)の部分について不法行為が成立する余10
地はあるが,その余については,不法行為の成立及び損害の発生を争う。
イ労働契約法20条違反の不法行為が成立するには,少なくとも,あるべき
労働条件の基準が存在しなくては,何が違法なのか,どのような損害が生じ
たのかを判断することができない。しかし,特に基本給及び賞与については,
企業ごと,従業員ごとに様々な要素を勘案して決定されるものであり,一律15
の判断ができる類のものではない。また,労働者は,賃金について納得でき
ないのであれば,経営者との個別の契約締結段階で交渉すべきであるし,労
働者には団体交渉権も認められている。加えて,裁判所は,民間企業の内情
や従業員の勤務状況を理解していないのであるから,裁判所が労働者の賃金
を実質的に決めるようなことは認められるべきではない。そうすると,嘱託20
職員の労働条件が正職員の労働条件の何割を下回れば不法行為が成立する
などという判断をすることは不相当であり,皆精勤手当及び敢闘賞(精励手
当)の部分以外については不法行為を認めるべきではない。
ウ賠償すべき精神的損害の発生は争う。
第3当裁判所の判断25
1労働契約法20条違反の有無について(争点1)
⑴はじめに
ア労働契約法20条は,有期契約労働者の労働条件が,期間の定めがあるこ
とにより,無期契約労働者の労働条件と相違する場合においては,当該労働
条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の
内容),当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以上,職務内容及び変更範5
囲)その他の事情(以上,職務の内容等)を考慮して,不合理と認められる
ものであってはならない旨を定めている。これは,有期契約労働者について
は,無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく,両
者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期契約労働者の
公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより10
不合理なものとすることを禁止したものである。そして,同条は,有期契約
労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に,
職務の内容等を考慮して,その相違が不合理と認められるものであってはな
らないとするものであり,職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を
求める規定であると解される。15
労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件が期間
の定めがあることにより相違していることを前提としているから,両者の労
働条件が相違しているというだけで同条を適用することはできない。一方,
期間の定めがあることと労働条件が相違していることとの関連性の程度は,
労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるかどうかの判断に当た20
って考慮すれば足りるものであるということができる。そうすると,同条に
いう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働
者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであるこ
とをいうものと解するのが相当である。
労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」とは,有期契約労働25
者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することが
できるものであることをいうと解するのが相当である。そして,両者の労働
条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的評価を伴うものであるか
ら,当該相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については当該相違
が同条に違反することを主張する者が,当該相違が不合理であるとの評価を
妨げる事実については当該相違が同条に違反することを争う者が,それぞれ5
主張立証責任を負うものと解される。(以上,最高裁平成30年6月1日第
二小法廷判決・民集72巻2号88頁。以下「最高裁判決1」という。)
イ労働者の賃金に関する労働条件は,労働者の職務の内容並びに当該職務の
内容及び配置の変更の範囲(職務内容及び変更範囲)により一義的に定まる
ものではなく,使用者は,雇用及び人事に関する経営判断の観点から,労働10
者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して,労働者の
賃金に関する労働条件を検討するものということができる。また,労働者の
賃金に関する労働条件の在り方については,基本的には,団体交渉等による
労使自治に委ねられるべき部分が大きいということもできる。そして,労働
契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合15
理かどうかを判断する際に考慮する事情として,「その他の事情」を挙げて
いるところ,その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき
理由は見当たらない。したがって,有期契約労働者と無期契約労働者との労
働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮
されることとなる事情は,労働者の職務内容及び変更範囲並びにこれらに関20
連する事情に限定されるものではないというべきである。
定年制は,使用者が,その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提
としながら,人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに,賃金コ
ストを一定限度に抑制するための制度ということができるところ,定年制の
下における無期契約労働者の賃金体系は,当該労働者を定年退職するまで長25
期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解さ
れる。これに対し,使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場
合,当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また,定年退職
後に再雇用される有期契約労働者は,定年退職するまでの間,無期契約労働
者として賃金の支給を受けてきた者であり,一定の要件を満たせば老齢厚生
年金の支給を受けることも予定されている。そして,このような事情は,定5
年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに
当たって,その基礎になるものであるということができる。
そうすると,有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,
当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認め
られるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他10
の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。
労働者の賃金が複数の賃金項目から構成されている場合,個々の賃金項目
に係る賃金は,通常,賃金項目ごとに,その趣旨を異にするものであるとい
うことができる。そして,有期契約労働者と無期契約労働者との賃金項目に
係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに15
当たっては,当該賃金項目の趣旨により,その考慮すべき事情や考慮の仕方
も異なり得るというべきである。そうすると,有期契約労働者と無期契約労
働者との個々の賃金項目に関する労働条件の相違が不合理と認められるも
のであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較すること
のみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきである。な20
お,ある賃金項目の有無及び内容が,他の賃金項目の有無及び内容を踏まえ
て決定される場合もあり得るところ,そのような事情も,有期契約労働者と
無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認め
られるものであるか否かを判断するに当たり考慮されることになる。(以上,
最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号202頁。以下25
「最高裁判決2」という。)
⑵期間の定めによる相違であるかどうか
原告らは,無期契約労働者である正職員と有期契約労働者である嘱託職員の
労働条件の相違は労働契約法20条に違反する旨主張するところ,当該相違は,
正職員には正職員就業規則等が,嘱託職員には嘱託規程がそれぞれ適用される
ことにより生じているものであるから,期間の定めの有無に関連して生じたも5
のであるということができる。よって,被告における正職員と嘱託職員の労働
条件は,同条にいう期間の定めがあることにより相違しているといえる。
⑶正職員と嘱託職員の職務の内容等の相違について
原告らは,前記前提事実⑹のとおり,いずれも,再雇用に当たり主任の役職
を退任したことを除いて,定年退職の前後で,その職務内容及び変更範囲に相10
違はなかった。そして,原告らは,再雇用時に主任の役職を退任しているもの
の,これによりその業務の内容及び責任の範囲に相違が生じたことを認めるに
足りる事実や証拠はない。仮に,主任退任により職務の内容に相違が生じてい
たとしても,嘱託職員となって以降は,役付手当が不支給となったことで,当
該相違は,既に労働条件に反映されているといえる。15
したがって,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時では,その職務内容及
び変更範囲には相違がなかったものであり,本件において,有期契約労働者と
無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否か
の判断に当たっては,もっぱら,「その他の事情」として,原告らが被告を定年
退職した後に有期労働契約により再雇用された嘱託職員であるとの点を考慮20
することになる。
⑷基本給について
ア原告らが嘱託職員として支払を受けていた基本給について,正職員との間
で労働契約法20条に違反する不合理な相違があったかどうかを検討する
に当たっては,前記前提事実のほか,以下の事実を指摘することができる。25
被告の正職員の基本給は,その勤続年数に応じて増加する年功的性格を
有するものであったと認められる。すなわち,平成25年以降5年間の正
職員(資格取得から1年以上勤務した者であり,管理職を除く。)の基本給
の平均額は,被告全体で月額14万円前後を推移しているところ,勤続年
数1年以上5年未満の正職員(以下「若年正職員」という。)の基本給平均
額は,月額約11万2000円から約12万5000円である一方,勤続5
30年以上の正職員の基本給平均額は,月額約16万7000円から約1
8万円であり,その間の年代の正職員の基本給平均額を見ても,勤続年数
に応じて増加していく傾向にあることが認められる。(乙31)
原告甲が定年退職した平成25年の賃金センサスによれば,産業計・男
女計・学歴計の55歳ないし59歳の「きまって支給する現金支給額」は,10
37万3500円(男計であれば42万0900円),「所定内給与額」は,
35万1300円(男計であれば39万4800円),「年間賞与その他特
別給与額」は,年額101万1900円(男計であれば118万4900
円)である。また,同年の賃金センサスによれば,産業計・男女計・学歴
計の60歳ないし64歳の「きまって支給する現金給与額」は,月額2715
万5800円(男計であれば29万6300円)であり,「所定内給与額」
は,26万2100円(男計であれば28万1100円),「年間賞与その
他特別給与額」は,年額49万7000円(男計であれば54万3300
円)である。
原告乙が定年退職した平成26年の賃金センサスによれば,産業計・男20
女計・学歴計の55歳ないし59歳の「きまって支給する現金支給額」は,
38万3600円(男計であれば43万2600円),「所定内給与額」は,
36万8000円(男計であれば40万6100円),「年間賞与その他特
別給与額」は,年額108万9700円(男計であれば127万7800
円)である。また,同年の賃金センサスによれば,産業計・男女計・学歴25
計の60歳ないし64歳の「きまって支給する現金給与額」は,月額28
万0600円(男計であれば30万0500円)であり,「所定内給与額」
は,26万6500円(男計であれば28万4700円),「年間賞与その
他特別給与額」は,年額55万1600円(男計であれば60万6300
円)である。
原告甲の定年退職時の基本給は,月額18万1640円であり,嘱託職5
員時の基本給は,1年目が月額8万1738円で,その後低下し,最終年
まで月額7万4677円であった。また,原告乙の定年退職時の基本給は,
月額16万7250円であり,嘱託職員時の基本給は,1年目が月額8万
1700円で,その後低下し,最終年まで月額7万2700円であった。
このように,原告らの嘱託職員時の基本給は,正職員定年退職時と比較し10
て,原告甲について45%以下,原告乙について48.8%以下となって
いる結果,若年正職員の基本給を下回っている。
また,原告らの定年退職時の月額賃金から残業手当を除いた金額は,い
ずれも約30万円強であり,賞与額も年間約50万円強にとどまっていた
と認められる(弁論の全趣旨)から,原告らが被告から定年退職時に受給15
していた賃金は,一般に定年退職に近い時期であるといえる55歳ないし
59歳の賃金センサス上の平均賃金を下回るものであり,むしろ,定年後
再雇用の者の賃金が反映された60歳ないし64歳の賃金センサス上の
平均賃金をやや上回るにとどまるものであった。
さらに,原告らが嘱託職員として勤務した期間の総支給額(役付手当,20
賞与及び嘱託職員一時金を除く。)をみると,原告甲は,嘱託職員として勤
務を開始してから3年間の総支給額が正職員定年退職時の労働条件で就
労した場合の56.1%,嘱託職員4年目から退職までの総支給額が正職
員定年退職時の労働条件で就労した場合の56.4%にとどまり,原告乙
は,嘱託職員として勤務を開始してから平成28年7月分までの総支給額25
が正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の61.6%,同年8月分
から平成30年6月分までの総支給額が正職員定年退職時の労働条件で
就労した場合の59%,同年7月分から退職までの総支給額が正職員定年
退職時の労働条件で就労した場合の63.2%にとどまった。このような
差額は,総支給額に賞与(嘱託職員一時金)も含めると,さらに大きくな
る(別表3及び4参照)。5
原告らは,いずれも,正職員定年退職時に退職金の支払を受けたほか,
60歳で嘱託職員となった年から雇用保険法による高年齢雇用継続基本
給付金の支給を,61歳になった年から老齢厚生年金(報酬比例部分)の
支給を受けていた。なお,高年齢雇用継続基本給付金は,被保険者であっ
た期間が要件を満たす60歳以上65歳未満の労働者が60歳到達後も10
継続して雇用され,その賃金額が60歳到達時点の賃金月額の75%未満
である場合,その低下した比率に応じて支給されるが,対象月の賃金額が
60歳到達時点の賃金月額の61%以下に低下した場合,実際に支払われ
た賃金額の15%の金額の給付金が支給されることとなる。(甲24,2
5,弁論の全趣旨)15
被告は,平成24年法律第78号により高年法が改正され,労使協定に
より継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定める制度(改正前
の9条2項)が廃止されたことを踏まえ,職員代表との間で再雇用制度に
係る協定書を作成している。しかし,上記協定書は,飽くまで上記高年法
の改正を踏まえ,再雇用までの手続,有期労働契約の更新の基準等につい20
て定めるものであり,嘱託職員の賃金に係る合意はされていない。その他,
本件において,原告らが嘱託職員となる以前に,被告とその従業員との間
で嘱託職員の賃金に係る労働条件について合意がされたとか,その交渉結
果が制度に反映されたという事実は認められない。(甲4,弁論の全趣旨)
原告甲は,被告代表者に対し,平成27年2月24日,労働契約法2025
条に言及した上,正職員定年退職時に比べて嘱託職員としての賃金が大幅
に減額になっていることから労働契約の内容を見直すよう求める書面を
送付した。その後,原告甲は,被告代表者との間で,同年7月18日まで,
書面により,原告甲が嘱託職員としての賃金等について要望や照会をし,
被告代表者がこれに回答する形式のやり取りを行った。また,原告甲は,
その所属する労働組合の分会長として,被告代表者に対し,平成28年55
月9日,嘱託職員と正職員の賃金の相違について回答を求める書面を送付
した。しかし,嘱託職員の労働条件について,正職員の労働条件との相違
を踏まえた見直しが行われた事実は認められない。(甲21の1ないし1
1)
イ以上によれば,原告らは,正職員定年退職時と嘱託職員時でその職務内容10
及び変更範囲には相違がなかったにもかかわらず,原告らの嘱託職員として
の基本給は,正職員定年退職時と比較して,50%以下に減額されており,
その結果,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性格がある
ことから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の基
本給をも下回っている。また,そもそも,原告らの正職員定年退職時の賃金15
は,同年代の賃金センサスを下回るものであったところ,原告らの嘱託職員
として勤務した期間の賃金額は,上記のような基本給の減額を大きな要因と
して,正職員定年退職時の労働条件で就労した場合の60%をやや上回るか
それ以下にとどまることとなっている。
そして,このことは,原告らが嘱託職員となる前後を通じて,被告とその20
従業員との間で,嘱託職員の賃金に係る労働条件一般について合意がされた
とか,その交渉結果が制度に反映されたという事情も見受けられないから,
労使自治が反映された結果であるともいえない。
以上に加えて,基本給は,一般に労働契約に基づく労働の対償の中核であ
るとされているところ,現に,原告らの正職員定年退職時の毎月の賃金に基25
本給が占める割合は相応に大きく,これが賞与額にも大きく影響していたこ
とからすれば,被告においても,基本給をそのように位置付けているものと
認められる。被告における基本給のこのような位置付けを踏まえると,上記
の事実は,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時の各基本給に係る相違が
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たることを基礎付け
る事実であるといえる。5
ウ他方,基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不合理であるとの評価を妨
げる事実等について検討するに,正職員の基本給は,長期雇用を前提とし,
年功的性格を含むものであり,正職員が今後役職に就くこと,あるいはさら
に高位の役職に就くことも想定して定められているものである一方,嘱託職
員の基本給は,長期雇用を前提とせず,年功的性格を含まないものであり,10
嘱託職員が今後役職に就くことも予定されていないことが指摘できる。また,
嘱託職員は,正職員を60歳で定年となった際に退職金の支払を受け,それ
以降,要件を満たせば,高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例
報酬分)の支給を受けることが予定され,現に,原告らはこれらを受給して
いたことも,基本給に係る相違が不合理であるとの評価を妨げる事実である15
といえる。
しかし,これら事実は,定年後再雇用の労働者の多くに当てはまる事情で
あり,前記イの事実,とりわけ原告らの職務内容及び変更範囲に変更がない
にもかかわらず,原告らの嘱託職員時の基本給が,それ自体賃金センサス上
の平均賃金に満たない正職員定年退職時の賃金の基本給を大きく下回るこ20
とや,その結果,若年正職員の基本給も下回ることを正当化するには足りな
いというほかない。
被告は,定められた手順に従って原告らの定年後再雇用又はその更新の
意向を確認し,賃金に係る労働条件も事前に提示しており,原告らが,い
ずれも,そのような経過を経て,賃金に係る労働条件についても合意の上,25
嘱託職員となり,その後も有期労働契約を更新していた旨指摘する。しか
し,被告が指摘する経過は,労働契約を締結する過程として当然の事象を
指摘するものであるにすぎず,基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不
合理であるとの評価を妨げる事実とはいえない。
また,被告は,原告らは賃金に係る労働条件に不満があれば,いつでも
団体交渉を求めることができた旨主張するが,原告甲が被告代表者に対し5
個人で要望を行っても,労働組合の構成員として要望を行っても,その内
容が労働条件に反映された事実がないことは前記のとおりであるから,こ
のことは,同じく基本給に係る正職員と嘱託職員の相違が不合理であると
の評価を妨げる事実とはいえない。
被告は,嘱託職員一時金は正職員の賞与とは異なり,嘱託職員に対する10
調整給の趣旨で支給するものであるから,正職員定年退職時と嘱託職員時
の基本給の相違を検討するに際しては,毎月の基本給額に嘱託職員一時金
も含めるべきである旨主張する。しかし,嘱託職員一時金は,嘱託規程に
おいて,嘱託職員に対しては賞与を原則として支給しないものの,正職員
に対する賞与とは別に,勤務成績を勘案して支給することがあると規定さ15
れていること,さらに,嘱託職員としての労働契約書にも,勤務成績等を
考慮の上,支給することがあると規定されていることを受けて,嘱託職員
に対して支給されるものであり,その支給時期も正職員の賞与支給時期と
同時期であることからすれば,嘱託職員一時金は,正職員の賞与に代替す
るものと位置付けられる。そうすると,嘱託職員一時金について,専ら基20
本給の不足を調整することを目的として支給されるものであるなどと解
することはできず,これは,賞与に関する相違が労働契約法20条にいう
不合理と認められるものに当たるか否かを検討するに当たって考慮すべ
きものである。被告の上記主張は採用できない。
さらに,被告は,雇用保険法による高年齢雇用継続基本給付金制度は,25
定年後再雇用時の賃金が60歳時の賃金の61%以下になる事態も予定
している旨指摘する。しかし,そのことから直ちに,定年後再雇用時の賃
金が61%以下となる労働条件の設定が常に許容されるというものでは
ない。
オ以上のとおり,原告らは,被告を正職員として定年退職した後に嘱託職員
として有期労働契約により再雇用された者であるが,正職員定年退職時と嘱5
託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなく,原告らの正職員定年
退職時の賃金は,賃金センサス上の平均賃金を下回る水準であった中で,原
告らの嘱託職員時の基本給は,それが労働契約に基づく労働の対償の中核で
あるにもかかわらず,正職員定年退職時の基本給を大きく下回るものとされ
ており,そのため,原告らに比べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性10
格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正
職員の基本給をも下回るばかりか,賃金の総額が正職員定年退職時の労働条
件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまる帰結をもた
らしているものであって,このような帰結は,労使自治が反映された結果で
もない以上,嘱託職員の基本給が年功的性格を含まないこと,原告らが退職15
金を受給しており,要件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生
年金(比例報酬分)の支給を受けることができたことといった事情を踏まえ
たとしても,労働者の生活保障の観点からも看過し難い水準に達していると
いうべきである。
そうすると,原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時の各基本給に係る金20
額という労働条件の相違は,労働者の生活保障という観点も踏まえ,嘱託職
員時の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で,労働契
約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当であ
る。
したがって,原告甲の嘱託職員時の基本給(月額)は,18万1640円25
(正職員定年退職時の基本給)×60%=10万8984円を下回る部分が,
原告乙の嘱託職員時の基本給(月額)は,16万7250円(正職員定年退
職時の基本給)×60%=10万0350円を下回る部分が,それぞれ労働
契約法20条にいう不合理なものと認められることとなるが,原告乙が病欠
をした平成27年2月分は,正職員であれば8万3628円の基本給であっ
たことが認められるから,8万3628円×60%=5万0177円を下回5
る部分が同条にいう不合理なものと認められることになる(別表1及び2)。
⑸皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)について
原告らは,嘱託職員として,正職員定年退職時より減額された皆精勤手当及
び敢闘賞(精励手当)を支給されていたところ,これら賃金項目の支給の趣旨
は,所定労働時間を欠略なく出勤すること及び多くの指導業務に就くことを奨10
励することであって,その必要性は,正職員と嘱託職員で相違はないから,両
者で待遇を異にするのは不合理である旨主張する。
上記原告らの主張は正当として是認できるから,皆精勤手当及び敢闘賞(精
励手当)について,正職員定年退職時に比べ嘱託職員時に減額して支給すると
いう労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当15
たると解するのが相当である。
⑹家族手当について
被告は,正職員に対しては,前記前提事実⑵イcのとおり,扶養家族の人
数に応じて家族手当を支給しているところ,嘱託職員に対しては,扶養家族の
有無にかかわらず,これを支給していない。これを受けて,原告らは,扶養家20
族の有無は,定年後再雇用であるかどうかにかかわらない事項であり,正職員
と嘱託職員で待遇を異にすることは不合理である旨主張する。
しかし,被告は,労務の提供を金銭的に評価した結果としてではなく,従業
員に対する福利厚生及び生活保障の趣旨で家族手当を支給しているのであり,
使用者がそのような賃金項目の要否や内容を検討するに当たっては,従業員の25
生活に関する諸事情を考慮することになると解される。そして,被告の正職員
は,嘱託職員と異なり,幅広い世代の者が存在し得るところ,そのような正職
員について家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由があ
るということができる。他方,嘱託職員は,正職員として勤続した後に定年退
職した者であり,老齢厚生年金の支給を受けることにもなる。
これらの事情を総合考慮すると,正職員に対して家族手当を支給する一方,5
嘱託職員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理であると
評価することはできず,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当
たるということはできない。
⑺賞与について
ア既に検討したとおり,被告は,正職員に対する賞与と同趣旨で,嘱託職員10
に対し,嘱託職員一時金を支給していたものと認められる。そこで,以下で
は,正職員の賞与と原告らの嘱託職員一時金の間で,労働契約法20条にい
う不合理と認められるものに当たるか否かを検討する。
イ正職員に対する平成25年年末分から令和元年夏季分までの賞与の算定
,正職員一律の調整率を各正職員の基15
本給に乗じ,さらに各正職員の勤務評定分を加算するというものである。他
方,原告らの嘱託職員一時金の算定方法は明らかではないものの,原告甲は,
4万2000円から10万8000円の間で推移し,原告乙は,6万620
0円から10万7500円の間で推移していた(原告乙は,平成26年年末
分として22万7400円の支払を受けているところ,これは,定年退職時20
期との関係で,正職員の算定方法を用いたものと認められる。)。しかし,仮
に原告らの嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の60%の金額(前記⑷
において不合理であると判断した部分を補充したもの)であるとして,正職
員の賞与の算定方法を当てはめると,原告甲は約15万円から約17万40
00円,原告乙は約13万9000円から約16万円にそれぞれ勤務評定分25
を加算した金額となり,原告らの嘱託職員一時金は,基本給に調整率を乗じ
た金額にも満たない。
さらに,前記⑷イの基本給に関する検討と同じく,原告らは,正職員定年
退職時と嘱託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなかったこと,
そもそも正職員定年退職時の賃金も賃金センサスの平均賃金を下回ること,
原告らの嘱託職員一時金が,原告らに比べて職務上の経験が劣り,金額も抑5
制される傾向のある若年正職員の賞与よりも低額であり,賃金の総額が正職
員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下
にとどまること,これが,労使自治が反映された結果であるともいえないこ
とを指摘できる。そうすると,これらの事実は,原告らの嘱託職員一時金と
正職員の賞与の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに10
当たることを基礎付ける事実であるといえる。
ウ他方,賞与は,月例賃金とは別に支給される一時金であり,労務の対価の
後払,功労報償,生活費の補助,労働者の意欲向上等といった多様な趣旨を
含み得るものであり,有期契約労働者と無期契約労働者の間で相違が生じて
いたとしても,これが労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当15
たるか否かについては慎重な検討が求められる。そして,前記⑷ウの基本給
に関する検討と同じく,正職員は,長期雇用を前提としており,今後役職に
就くこと,あるいはさらに高位の役職に就くことが想定されている一方,嘱
託職員は,長期雇用が前提とされず,今後役職に就くことも予定されていな
いこと,嘱託職員は,正職員を60歳で定年となった際に退職金の支払を受20
け,それ以降,要件を満たせば,高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年
金(比例報酬分)の支給を受けることが予定され,現に,原告らはこれらを
受給していたことを指摘できる。
しかし,これらの事実は,定年後再雇用の労働者の多くに当てはまる事情
であり,賞与について労働契約法20条違反の有無について慎重な検討が求25
められることを踏まえても,前記イの事実,とりわけ原告らの職務内容及び
変更範囲に変更がないにもかかわらず,嘱託職員一時金は正職員の賞与に比
べ大きく減額されたものであり,その結果,若年正職員の賞与をも下回るこ
と,しかも,賃金の総額も,賃金センサス上の平均賃金を下回る正職員定年
退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとど
まることを正当化するには足りないというほかない。5
エ以上のとおり,原告らは,被告を正職員として定年退職した後に嘱託職員
として有期労働契約により再雇用された者であるが,正職員定年退職時と嘱
託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなかった一方,原告らの嘱
託職員一時金は,正職員定年退職時の賞与を大幅に下回る結果,原告らに比
べて職務上の経験に劣り,基本給に年功的性格があることから将来の増額に10
備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の賞与をも下回るばかりか,
賃金の総額が正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや
上回るかそれ以下にとどまる帰結をもたらしているものであって,このよう
な帰結は,労使自治が反映された結果でもない以上,賞与が多様な趣旨を含
みうるものであること,嘱託職員の賞与が年功的性格を含まないこと,原告15
らが退職金を受給しており,要件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金及び
老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることができたことといった事情
を踏まえたとしても,労働者の生活保障という観点からも看過し難い水準に
達しているというべきである。
そうすると,原告らの正職員定年退職時の賞与と嘱託職員時の嘱託職員一20
時金に係る金額という労働条件の相違は,労働者の生活保障という観点も踏
まえ,原告らの基本給を正職員定年退職時の60%の金額(前記⑷において
不合理であると判断した部分を補充したもの)であるとして,各季の正職員
の賞与の調整率(前記前提事実aないしl)を乗じた結果を下回る限
度で,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するの25
が相当である。
なお,原告らは,原告らの嘱託職員一時金と正職員Fの賞与(原告乙が定
年退職する前は,原告乙及び正職員Fの賞与の平均額)を比較するところ,
原告らと正職員Fの間では,賞与算定の基礎となる基本給や勤務評定分とい
った前提条件に相違があるから,その比較結果を直接採用することはできな
い。5
2労働契約に基づく差額賃金請求の可否(争点2)
前記のとおり,原告らの嘱託職員時の労働条件には,正職員定年退職時の労働
条件との間で労働契約法20条にいう不合理と認められる相違が存在する。これ
を前提に,まず,労働契約に基づき差額賃金を請求することができるかどうかを
検討する。10
⑴労働契約法20条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違
は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや,そ
の趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば,同
条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であり,有期労働契約
のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となるものと解さ15
れる。もっとも,同条は,有期契約労働者について無期契約労働者との職務の
内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であり,その文言上も,
両者の労働条件の相違が同条に違反する場合に,当該有期契約労働者の労働条
件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる旨を定
めていない。そうすると,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相20
違が同条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の
労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなる
ものではないと解するのが相当である。(最高裁判決1)
⑵原告らは,嘱託規程が嘱託職員の労働条件につき,嘱託規程に定めのない事
項は正職員就業規則等を準用する旨定めている規定の存在を指摘し,労働契約25
法20条により私法上無効となった労働条件は,「嘱託規程に定めのない事項」
に該当するため,正職員と同様の基準及び計算方法により算定された賃金請求
権が発生する旨主張する。しかし,原告らが指摘する嘱託規程の上記規定は,
嘱託規程において定めを置かなった事項について,正職員就業規則等により補
充することを予定した規定であり,本件のように,原告らと被告の間で行った
嘱託職員としての労働条件に関する個別の合意の内容が私法上無効となる場5
合に正職員就業規則等を準用することを定めた規定とはいえない。
そうすると,嘱託規程及び正職員就業規則等の解釈を通じて,嘱託職員時の
原告らについても正職員就業規則等が適用され,労働契約に基づき差額賃金を
請求することができる旨の原告らの上記主張を採用することはできない。
⑶よって,原告らの請求のうち,労働契約に基づき差額賃金の支払を請求する10
部分については理由がない。
3不法行為に基づく損害賠償請求の可否及び損害額(争点3)
⑴前記のとおり,①基本給のうち正職員定年退職時の額の60%を下回る部分,
②皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)の減額分,③賞与(嘱託職員一時金)の
うち正職員定年退職時の基本給の60%に各季の正職員の賞与の調整率を乗15
じた結果を下回る部分は,いずれも労働契約法20条に違反するものである。
また,このような法違反状態の労働条件は,被告が原告らに対して提示し,そ
の後,これに沿った賃金の支払がされたのであるから,被告には,このような
違法な取扱いをしたことについて過失があったというべきである。
以上によれば,原告甲については別表1,原告乙については別表2に記載さ20
れた「あるべき金額」欄と「支給額」欄の差額に相当する損害を被ったという
ことができる。なお,残業手当に係る検討結果を補足すると,本件訴訟におい
ては,前記前提事実⑸ウのとおり残業手当を算定することで当事者間に争いが
ないところ,その算定の基礎となる基本給及び皆精勤手当(又は精励手当)に
上記のような違法があるため,基本給を正職員定年退職時の額の60%とし,25
皆精勤手当(又は精励手当)を正職員定年退職時と同額として算定した残業手
当と実際に支給された残業手当の差額は,上記のような違法な取扱いとの間で
相当因果関係が認められる。
⑵原告らは,被告の不法行為による精神的損害の発生を主張し,慰謝料(原告
甲は150万円,原告乙は100万円)を請求している。しかし,原告らに生
じた財産的損害は賠償義務が履行されることによって回復されるものであり,5
これにより精神的損害も慰藉されるところ,それでもなお賠償すべき精神的損
害があるとまでは認められない。
⑶そうすると,原告らの請求のうち,不法行為に基づき損害賠償の支払を請求
する部分については,前記⑴の範囲で一部理由がある。よって,被告は,原告
らに対し,不法行為に基づく損害賠償として上記範囲の金額の支払義務に加え,10
毎月の賃金の相違により生じる損害については,毎月の賃金の各支払期日の翌
日(原告甲の平成25年8月分から平成26年7月分はその請求どおり平成2
8年9月14日とする。)から各支払済みまで,各季の賞与(嘱託職員一時金)
の相違により生じる損害については,夏季分は支払日より後の日である毎年8
月1日,年末分は支払日より後の日である翌年1月1日から各支払済みまで民15
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
第4結論
以上の次第であるから,原告らの請求は,主文第1項及び第2項掲記の範囲で一
部理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却すること
として,主文のとおり判決する。20
名古屋地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官井上泰人
裁判官前田早紀子
裁判官伊藤達也
(別紙省略)

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