弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主文
1原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成13年6月6日付けで控訴人に対してした,同月14日をもって控訴人の開設するα医院に係
る保険医療機関の指定を取り消す旨の処分を取り消す。
3 被控訴人が平成13年6月6日付けで控訴人に対してした,同月14日をもって控訴人の保険医の登録を取り
消す旨の処分を取り消す。
4 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,健康保険法の規定によりその開設する診療所について保険医療機関の指定を受けるとともに,保険医の
登録を受けていた控訴人が,被控訴人から,控訴人が上記診療所をして診療報酬を不正に請求させたことなどを理由
に,平成13年6月6日付けで,上記の保険医療機関の指定を取り消す旨の処分及び保険医の登録を取り消す旨の処分
を受けたため,かかる不正請求の事実はないからこれらの処分は違法であるなどと主張して,被控訴人に対し,これら
の処分の取消しを求めた事案である。
 原審は,控訴人の請求を棄却し,これに不服な控訴人が控訴したものである。
2法令の定め等,前提となる事実,当事者の主張,争点は,次の(1)のとおり訂正し,(2)のとおり当審における控
訴人の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし4(2頁1行目から41頁末行まで)に記載の
とおりであるから,これを引用する。
(1)原判決の訂正
原判決6頁6行目の次に行を改めて次のとおり加え,これに伴い,同6頁7行目から7頁11行目にかけての
段落番号の「(3)」ないし「(6)」を順次1ずつ繰り下げて「(4)」ないし「(7)」と改める。
「(3) 控訴人は,原判決別紙1記載の患者18名について,原判決別紙2に記載のとおりの診療を行ったとし
て,診療報酬を請求していた。」
(2)当審における控訴人の主張
被控訴人は,あたかもaが署名押印したように見える申立書(乙17の2枚目)を証拠として提出したが,控
訴人が,同申立書の筆跡がaの筆跡と異なることを指摘すると,被控訴人は,aの妻が記載した旨の書面(乙75)を
提出し,原判決も,同申立書はaの妻が作成した旨認定した。しかし,控訴人がaの妻に確認したところ,aの妻も,
同申立書を作成していないと回答している。同申立書は,被控訴人側で作成したものである。
 ところで,被控訴人は,控訴人に対する第1回の個別指導の後,本来であれば更なる個別指導を行うはずのと
ころ(一般的には数回の個別指導を経て監査を行うのが通例である。),患者からの申立書が相次いだとの理由で,個
別指導を行うことなく監査を行った。しかし,上記の相次いだという申立書の1つはaの申立書である。要するに,被
控訴人は,控訴人を処分に持ち込むために,患者の申立書を被控訴人側で自ら作成したのであって,かかる行政手続
は,不当かつ違法である。
第3当裁判所の判断
1争点2について
 当裁判所も,本件各取消処分に至る過程において,本件各取消処分の取消事由となるような違法があったとは認
められないと判断する。その理由は,次の(1)のとおり訂正し,(2)のとおり当審における控訴人の主張について説明を
付加するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2(原判決60頁26行目から66頁7行目まで)に記載のとおり
であるから,これを引用する。
(1)原判決の訂正
ア原判決61頁16行目の「b」の次に「(平成11年9月13日に死亡していた(乙25)。)」を加え
る。
イ 同62頁15行目及び21行目の各「行政処分の事実」をいずれも「行政処分の原因となる事実」と改め
る。
ウ同64頁6行目の「いたのもであり」を「いたものであり」と,11行目の「甲90の1・2」を「甲91の1
・2」とそれぞれ改める。
エ 同65頁22行目の「証拠はない」の次に「(乙48(同テープに作為が加えられた様子はない。),51
によれば,少なくとも本件聴聞が開始された時点においては,同人が出席していたものと認めることができる。)」を
加える。
(2)当審における控訴人の主張について
控訴人は,aの申立書(乙17の2枚目)は,同人やその妻が作成したものではなく,被控訴人側で作成した
ものである,被控訴人は,控訴人を処分に持ち込むために,aの申立書を被控訴人側で自ら作成したのであって,かか
る行政手続は,不当かつ違法である旨主張する。
 しかし,aの申立書を被控訴人側で作成したと認めるに足りる証拠はなく,控訴人の同主張は採用できない。
 なお,控訴人は,控訴人に対する第1回の個別指導の後,本来であれば更なる個別指導を行うはずのところ(
一般的には数回の個別指導を経て監査を行うのが通例である。),個別指導を行うことなく監査を行ったと主張する。
しかし,
(ア)証拠(乙6,7)によれば,監査要綱の第3には,「監査対象となる保険医療機関等の選定基準」につ
き,次のとおり定められていることを認めることができる。
「 監査は,次のいずれかに該当する場合に行うものとする。
1.診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
2.診療報酬の請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
3.度重なる個別指導(「指導大綱」に定める「個別指導」をいう。以下同じ。)によっても診療内容又は
診療報酬の請求に改善が見られないとき。
4.正当な理由がなく個別指導を拒否したとき。」
(イ)そして,前記第2の2で訂正の上引用した原判決の「前提となる事実」に記載のとおり,α医院は,平
成11年10月26日,診療報酬の不正請求の疑いで事故調査,個別指導を受けたことがあったが,被控訴人は,同年
12月以降,国民健康保険等の被保険者らから,受診した事実がないのに受診したとして医療費通知を受けた旨の申立
てが相次いだため,α医院に対し,診療報酬の不正請求の疑いを抱き,東京都福祉局と共に,α医院により診療報酬請
求の対象とされている健康保険又は国民健康保健の被保険者らから事情を聴取し,その内容をα医院による診療報酬請
求の内容と照合し,その結果,α医院に対する診療報酬の不正請求の疑いを強めたことから,監査を行ったものであ
る。そうすると,本件においては,監査要綱第3の3ではなく,同第3の2に該当するとして監査が行われたものであ
って,監査の前に数回の個別指導を経る必要はないから,この点についての控訴人の主張は,失当である。
2争点3について
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(1)前記第2の2で引用した原判決の「前提となる事実」に記載のとおり,本件各取消処分は,いずれも書面で行
われたが,理由の提示について,本件指定取消処分に係る書面には,「健康保険法第43条ノ12第1号,第2号,第
3号及び第6号の規定に基づき,平成13年6月14日をもって保険医療機関の指定を取り消す。」と,本件登録取消
処分に係る書面には,「健康保険法第43条ノ13第1号及び第3号の規定に基づき,平成13年6月14日をもって
保険医の登録を取り消す。」と,それぞれ記載されているだけである。
(2)ところで,行政手続法(以下単に「法」という。)14条1項本文は,「行政庁は,不利益処分をする場合に
は,その名あて人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を示さなければならない。」と規定しており,また,同条3
項は,不利益処分を書面でするときは,同条1項の理由は,書面により示さなければならない旨規定している。
 そして,法が行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資すること
を目的としていること(法1条1項)に照らせば,法14条1項本文が行政庁に理由の提示を義務付けたのは,行政庁
の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,取消理由を名あて人に知らせることによって不服申
立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。このような理由提示義務の趣旨にかんがみれば,不利益処分が書面に
よってされる場合に,書面により示されなければならない理由としては,いかなる事実関係に基づきいかなる法規(処
分基準が公表されている場合にはその基準も)を適用して処分がされたのかを,処分の名あて人において了知し得るも
のでなければならないものと解される。
(3)これを本件についてみると,本件各取消処分における理由の提示は,上記(1)のとおり,単に根拠条文を摘示
しただけであり,しかも,摘示された条文のうち健康保険法43条ノ12第3号以外は,内容が抽象的であり,これだ
けではいかなる事実関係に基づく処分なのか全く了知することができず,理由の提示として不十分であるといわなけれ
ばならない。
 もっとも,上記1で訂正の上引用した原判決の認定,説示するとおり,本件監査において,控訴人は,原判決
別紙1記載の18名の患者の名前を挙げられて,個別に診療実態の有無等について事情聴取されたこと,聴聞通知書(
乙9)が控訴人に送付されたこと,控訴人は,本件聴聞に先立ち,監査調書(乙1)のほか,bを除く別紙1記載の患
者ら17名に関する患者実態調査票計17通(乙24,26ないし41)の各書類等を閲覧したこと,本件聴聞におい
て,被控訴人の担当者は,手続の冒頭に,不利益処分の原因となる事実等を説明し,控訴人も,MBC総合報告書等の
証拠書類を提出したうえ,口頭及び陳述書で意見陳述をするなどし,両者の間で,c,d及びbに対する診療実態等に
ついて議論がされたことがそれぞれ認められ,以上の経過によれば,控訴人は,本件聴聞において,上記18名の患者
についての診療報酬請求についての不正請求や3名の患者についての診療録の不実記載が不利益処分の原因となる事実
として問題にされていたことは知り得ていたものである(また,公表されている処分基準(監査要綱)のうちの何が問
題になっていたのかも知り得ていた。)。そうすると,そのような控訴人にとっては,上記(1)の程度の理由提示によっ
ても,いかなる法規,処分基準を適用して処分がされたのかという点のみならず,いかなる事実関係に基づき処分がさ
れたのかも了知し得たと考える余地もないではない。
 しかしながら,本件聴聞において,18名の患者についての診療報酬の不正請求や3名の患者についての診療
録の不実記載が問題になったからといって,本件各取消処分においてもこれらのすべての事実が当然に処分理由となる
とは限らないのであって,上記(1)の程度の理由記載だけでは,控訴人にとって,本件聴聞で問題になった診療報酬の不
正請求,診療録の不実記載のうちのどの患者に係るものに基づく処分なのかを了知することができないといわざるを得
ない。また,事実について行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとの法14条の趣旨に照らし
ても,本件聴聞において問題になった事実関係のうちどの事実に基づいて処分するのかを全く示していない上記の理由
記載は,理由の提示として不十分というほかない。
 そうすると,上記(1)の理由の提示は,法14条に違反するものというべきである。
(4) 以上のとおり,本件各取消処分は,法14条の理由提示義務に違反するものであるところ,法14条が理由提
示義務を規定している前記趣旨にかんがみると,同条の理由提示義務を欠く本件各取消処分は,違法であり,取消しを
免れないというべきである。
3以上によれば,争点1について判断するまでもなく,本件各取消処分の取消しを求める控訴人の請求は理由があ
るからこれを認容すべきである。よって,これと異なる原判決を取り消し,控訴人の請求を認容することとし,主文の
とおり判決する。
 東京高等裁判所第2民事部
   裁判長裁判官太田幸夫
  
            裁判官前田順司
            裁判官森 一岳
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