弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山内甲子男の上告理由第一点について。
 抹消登記の回復登記について登記上利害の関係を有する第三者があるときは、抹
消登記の回復請求権者は右第三者に対して承諾を請求することができるのであつて、
抹消された登記が仮登記であるという一事によつて、右承諾を請求する訴が不適法
となる理由はない。したがつて、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 原審の認定した事実によれば、上告人は、本件仮登記が抹消された後、訴外Dか
ら本件土地の所有権を取得した者として登記簿上に表示されているのであるから、
上告人は右仮登記の抹消登記の回復登記について登記上利害の関係を有する第三者
に該当するとした原審の判断は正当である。原判決には所論の違法はない。論旨は
採用できない。
 同第三点について。
 本件遺言書第六項前段の「訴外E(E)に若干の生活資金を与えられたいその額
は遺言執行者とDと協議のうえ決定すること」との部分は、金銭その他の代替物に
ついての種類遺贈と解すべく、遺言執行者は他の相続財産を換価処分してでもこれ
を受遺者に引き渡さなければならないから、その関係において相続財産の全部が遺
言執行者の管理に属する旨の原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はな
い。論旨は採用できない。
 同第四点について。
 上告人は本件遺言、ことにその第六項前段は公序良俗に反し無効であると主張す
るが、原審が確定した事実関係の下では右遺言が公序良俗に反するものとは認めら
れない。論旨は採用できない。
 同第五点について。
 Dがした本件仮登記の抹消登記の効力に関し、原審が、たとえ同人が仮登記権利
者たる亡Fの単独相続人たる地位にあつても、遺言執行者がある場合であるから、
Dが相続財産である本件土地に対する処分権を有しない(民法一〇一三条参照)の
に、判示のごとき方法でFの名を藉りてした右抹消登記は回復されるべきであると
判断したことは正当であり、原判決には所論の違法はない。引用の判例は本件と事
案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用できない。
 同第六点について。
 登記は物権変動の対抗力発生の要件であつて、この対抗力は法律上消滅事由の発
生しないかぎり消滅するものではないと解すべきである。したがつて、適法にされ
た本登記が権利者不知の間に不法に抹消された場合にも、その物権についての対抗
力が失われるものではないから、いつたん適法にされた本登記の権利者は、その物
権に基づき、不法に抹消された本登記の回復登記が許されるとともに、登記上利害
の関係ある第三者に対して右本登記の回復登記手続につき承諾を与えるべき旨を請
求することができるものといわなければならない(最高裁判所昭和三三年(オ)第
二号、同三六年六月一六日第二小法廷判決、民集一五巻六号一五九二頁参照)。と
ころで、仮登記は、物権保全の仮登記たると、請求権保全の仮登記たるとを問わず、
それが表示する権利に実体法上の対抗力を賦与するものでないが、その仮登記に基
づいて後に本登記がされると、「本登記ノ順位ハ仮登記ノ順位二依ル」(不動産登
記法七条二項)こととなるのであつて、この意味において、仮登記は、本登記の順
位保全の効力を有するとともに、この順位保全を公示して一般に警告することを目
的とするものであるから、右の趣旨に照らせば、本登記の不法抹消について回復登
記を許すのに準じて、仮登記の不法抹消についても、その回復登記を許すのが相当
であり、したがつて、仮登記が不法に抹消された場合には、仮登記権利者は、登記
上利害の関係ある第三者に対して回復登記手続につき承諾を与えるべき旨を請求す
ることができるものというべく、この場合、第三者の善意悪意、回復登記により受
ける損害の有無、程度は、右判断を左右するものではない、と解するのが相当であ
る。右判断と異なる当裁判所の判例(最高裁判所昭和二八年(オ)第二五四号、昭
和三〇年六月二八日第三小法廷判決、民集九巻七号九五四頁)は、右の限度でこれ
を変更すべきものと認める。所論は、以上と異なる見解に立つものであるから、論
旨は採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
 裁判官奥野健一は、退官のため署名押印することができない。
         裁判長裁判官    横   田   正   俊

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛