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令和2年9月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成30年(行ウ)第559号消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
口頭弁論終結日令和2年1月16日
判決
主文5
1麹町税務署長が平成30年7月30日付けで原告に対してした,平成2
6年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間に係る消費税及び
地方消費税の更正処分のうち,納付すべき消費税額マイナス1465万0
657円を超える部分及び納付すべき地方消費税額マイナス407万28
65円を超える部分並びに同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処10
分をいずれも取り消す。
2麹町税務署長が平成30年7月30日付けで原告に対してした,平成2
7年4月1日から平成28年3月31日までの課税期間に係る消費税及び
地方消費税の更正処分のうち,納付すべき消費税額マイナス689万54
04円を超える部分及び納付すべき地方消費税額マイナス186万05415
9円を超える部分並びに同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分
をいずれも取り消す。
3麹町税務署長が平成30年7月30日付けで原告に対してした,平成2
8年4月1日から平成29年3月31日までの課税期間に係る消費税及び
地方消費税の更正処分のうち,納付すべき消費税額マイナス1億279120
万4478円を超える部分及び納付すべき地方消費税額マイナス3451
万6505円を超える部分並びに同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課
決定処分をいずれも取り消す。
4訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由25
第1請求
主文1項から3項までと同旨
第2事案の概要等
1事案の概要
不動産の売買及び仲介業務等を目的とする株式会社である原告は,平成27
年3月期(平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間をい5
い,他の課税期間についても同様に表記する。)から平成29年3月期までの
各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)において,将来の転売を目的
としてマンション84棟(その一部又は全部が住宅として貸し付けられている
もの。以下「本件各マンション」という。)を購入した。かかる購入は,消費
税法(平成31年法律第6号による改正前のもの。以下同じ)2条12号に定10
める課税仕入れに当たるところ(以下,本件各マンションに係る課税仕入れを
「本件各課税仕入れ」という。),原告は,本件各課税期間に係る消費税及び
地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告において,本件各課税仕
入れが同法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(以
下「課税対応課税仕入れ」という。)に区分されるとして,本件各課税仕入れ15
に係る消費税額の全額を当該課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から
控除して申告を行った。これに対し,麹町税務署長(処分行政庁)は,本件各
課税仕入れは同号にいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通し
て要するもの」(以下「共通対応課税仕入れ」という。)に区分すべきもので
あるから,本件各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができな20
いとして,平成30年7月30日付けで,原告に対し,本件各課税期間に係る
消費税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及びこれらに伴う
過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件
各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をした。
本件は,原告が,被告を相手に,本件各更正処分のうち申告額を超える部分25
及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
2関係法令の定め
本件に関する消費税法の定めは別紙2-1,地方税法(平成24年法律第6
9号による改正前のもの。以下同じ)の定めは別紙2-2,国税通則法の定め
は別紙2-3に記載のとおりである。なお,本件に関しては,平成27年法律
第9号による改正前の消費税法及び平成24年法律第69号による改正前の地5
方税法も適用されることになるが,本件の争点との関係では実質的な差異はな
い。
⑴消費税の課税の対象
消費税の課税の対象となる資産の譲渡等とは,事業として対価を得て行わ
れる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう(消費税法4条1項,210
条1項8号)。国内において行われる資産の譲渡等のうち,住宅の貸付けや
土地の譲渡など一定のものについては,消費税を課さないこととされており
(同法6条1項,別表第1),このような非課税とされるものを除いた資産
の譲渡等を,課税資産の譲渡等という(同法2条1項9号)。
⑵仕入税額控除の仕組み15
仕入税額控除とは,所定の課税標準(課税資産の譲渡等であれば,その対
価の額)に税率を乗じて得た金額(課税標準額に対する消費税額)から,当
該課税期間中に国内において行った課税仕入れ(事業として他の者から資産
を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けること〔消費税法2
条1項12号〕)及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における保税地域20
からの課税貨物の引取り(以下,これらを併せて「課税仕入れ等」という。)
に係る消費税額を控除する制度である(同法30条1項)。
控除される具体的な税額(以下「控除対象仕入税額」という。)は,事業者
の課税売上高が5億円を超え,又は課税売上割合(後述)が95%に満たな
い場合には,次のア又はイの方法で計算される(消費税法30条2項)。25
ア個別対応方式
当該課税期間中に国内において行った課税仕入れ等につき,下記①から
③までの区分(以下「用途区分」という。)が明らかにされている場合に
は,課税対応課税仕入れ(下記①)に係る消費税額の合計額に,⒝共通
対応課税仕入れ(下記③)に係る消費税額の合計額に課税売上割合(当該
事業者が当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額5
の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行った課
税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として,政令で定めると
ころにより計算した割合〔消費税法30条6項〕)を乗じた額を加算した
金額が控除対象仕入税額となる(同条2項1号)。
また,事業者は,課税売上割合に代わる合理的な割合につき所定の要件10
を満たすものとして所轄税務署長の承認を受けている場合,上記⒝の計算
において,その承認を受けた割合(以下「課税売上割合に準ずる割合」と
いう。)を用いることができる(消費税法30条3項)。

①課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税対応課税仕入れ)15
②その他の資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「非課税対応課税
仕入れ」という。)
③課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの
(共通対応課税仕入れ)
イ一括比例配分方式20
上記ア以外の場合,当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額
に課税売上割合を乗じた金額が控除対象仕入税額となる(消費税法30条
2項2号)。
3前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)25
⑴原告の収益不動産販売事業
原告は,不動産の売買及び仲介業務等を目的とする株式会社であり,平成
15年から不動産投資事業に本格参入し,平成27年以降は東京証券取引所
市場第1部に上場している。原告の主要な事業のうち,収益不動産販売事業
(以下「本件事業」という。)は,富裕層の個人投資家を主な顧客とする販
売事業であって,賃貸収益を上げることのできる収益不動産(中古の賃貸用5
マンション等)を仕入れ,その資産価値及び収益力を向上させるバリューア
ップ(①物件に改良工事を施す「リノベーション」,②物件を良好な状態に
管理する「マネジメント」のほか,③物件を適正な賃料で貸し付けて空室を
可能な限り減らす「リーシング」等の方法による。)を行った上で,当該収
益不動産を顧客に転売するというものである(以下,このような本件事業の10
枠組みを「本件ビジネスモデル」ということがある。)。(甲4,48,4
9,乙3)
⑵本件各課税仕入れ
原告は,本件各課税期間において,本件ビジネスモデルに基づき,バリュ
ーアップ後の転売を目的として,中古の賃貸用マンション(主に居住用であ15
るが,一部に事務所,店舗が混在するものを含む。)である本件各マンショ
ン合計84棟(平成27年3月期及び平成28年3月期はいずれも26棟,
平成29年3月期は32棟。)を購入した(本件各課税仕入れ)。
本件各マンションは,本件各課税仕入れが行われた日(以下「本件各仕入
日」という。)の時点において,その一部又は全部が住宅として貸し付けら20
れており,原告は,本件各マンションの購入によってその賃貸人たる地位を
承継し,本件各マンションを転売するまでの間,その賃料を収受した。
(以上につき,甲2の1~3,50,乙4~7)
⑶本件各確定申告
原告は,本件各課税期間の消費税等について,個別対応方式で控除対象仕25
入税額を計算することを選択した上で,本件各課税仕入れの用途区分に関し
ては,建物の販売(課税資産の譲渡等)を目的にしたものであるから課税対
応課税仕入れに区分すべきであるとして,本件各課税仕入れに係る消費税額
の全額を課税標準額に対する消費税額から控除し,別表1-1から1-3ま
での各「確定申告」欄記載のとおり,法定申告期限までに確定申告を行った
(以下「本件各確定申告」という。)。5
なお,本件各課税期間における原告の課税売上高は5億円を超えており,
課税売上割合も95%を下回っていた。また,原告は,本件各課税期間中に
国内において行った課税仕入れ等について,用途区分を明らかにしていた(原
告は,一部において建物賃貸業も行っているが,住宅の貸付けを目的として
購入した建物については,非課税対応課税仕入れとして申告している。)。10
(以上につき,甲1の1~3,甲2の1,乙1の1~3)
⑷本件各処分
麹町税務署長(処分行政庁)は,本件各課税仕入れの用途区分について,
建物の販売(課税資産の譲渡等)のみならず,住宅の貸付け(その他の資産
の譲渡等)も目的としたものであるから,共通対応課税仕入れに区分すべき15
であって,課税標準額に対する消費税額から控除することができるのは,本
件各課税仕入れに係る消費税額に本件各課税期間に係る課税売上割合(平成
27年3月期は約36%,平成28年3月期及び平成29年3月期はいずれ
も約34%。以下「本件各課税売上割合」という。)を乗じた金額にとどま
るとして,平成30年7月30日付けで,原告に対し,別表1-1から1-20
3までの各「更正処分」欄記載のとおり,本件各課税期間に係る消費税等の
各更正処分(本件各更正処分)及びこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決
定処分(本件各賦課決定処分)をした。なお,平成27年3月期に係る更正
処分においては,本件各課税仕入れの用途区分が上記のとおり変更されたほ
か,原告が住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)を目的として購入したマ25
ンション1棟に係る課税仕入れについても,駐車場の貸付け(課税資産の譲
渡等)を含むとの理由で,用途区分が非課税対応課税仕入れから共通対応課
税仕入れへと変更されている。(甲2の1~3,58の1~3)
⑸本件各確定申告では,納付すべき消費税等の額がマイナスとなり,合計1
億8991万0458円の還付金が生じていたのに対し,本件各更正処分で
は,還付金はなくなり,合計2億7731万5400円の消費税等を納付す5
べきことになり,差引納付すべき消費税等の額は合計4億6722万585
8円となった。また,過少申告加算税の額は合計7000万8000円とな
った(別表1-1から1-3まで)。
なお,本件各確定申告と本件各更正処分とでこのような差が生じたのは,
上記⑷のとおり本件各課税売上割合が約34~36%にとどまるためである10
が,これは,原告の本件各課税期間の売上げの一部に住宅の貸付けによる収
入が含まれるほか,本件ビジネスモデルの下で,中古の賃貸用マンションを
転売する際に,その敷地の譲渡(土地の譲渡は非課税である。)も併せて行
われるのが通常であるため,非課税売上げの金額が全体の相当部分を占める
こととなるという,構造的な要因によるものである。15
⑹審査請求
原告は,本件各処分を不服として,平成30年9月13日付けで審査請求
をした(甲3)が,国税不服審判所長は,審査請求がされた日の翌日から起
算して3か月を経過しても裁決をしなかった。
⑺本件訴訟の提起等20
原告は,平成30年12月14日,国税通則法115条1項1号に基づき,
国税不服審判所長の裁決を経ることなく本件訴訟を提起した。そして,原告
は,平成31年3月19日,上記⑹の審査請求を取り下げた(乙8)。
4争点
⑴本件各更正処分の適法性に関し25
ア本件各課税仕入れの用途区分(本件各課税仕入れが課税対応課税仕入れ
と共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきものであるか)(争点⑴)
イ平等取扱原則違反の有無(争点⑵)
⑵本件各賦課決定処分の適法性に関し
国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無(争点⑶)
5争点に関する当事者の主張5
争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3記載のとおりである。また,被
告が主張する本件各処分に係る課税の根拠及び計算は,別紙4記載のとおりで
あるところ,原告は,上記4において争点となっている点を除き,これを争う
ことを明らかにしていない。なお,上記各別紙で定義した略語は,本文におい
ても用いる。10
第3当裁判所の判断
当裁判所は,本件各課税仕入れは専ら将来における不動産の転売のためにさ
れたものとして課税対応課税仕入れに区分すべきものであり,その消費税額の
全額が控除対象仕入税額となるため,本件各更正処分のうち申告額を超える部
分及び本件各賦課決定処分はいずれも違法であるから,これらの取消しを求め15
る原告の請求は認容すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下のとおり
である。
1争点⑴(本件各課税仕入れの用途区分)について
⑴仕入税額控除及び用途区分の趣旨等
ア消費税の制度は,広く公平な税負担を求めるという観点から,ほとんど20
全ての国内における取引を課税の対象とするものであるが,これらの取引
は生産や流通等の各段階に及ぶため,それぞれの取引に消費税が課される
結果,製品やサービスが消費者(いわゆる最終消費者を指す。以下同じ)
に購入されるまでの間に二重,三重に消費税が課されることとなって税負
担が累積すると,その負担は消費者が購入する製品等の価格に転嫁される25
こととなる。このような税負担の累積を避け,消費者に対する税負担の適
正な転嫁を実現し,もって中立かつ公平な課税の確立を図るため,消費税
法は,仕入税額控除の制度を採用し,当該課税期間の課税標準額に対する
消費税額から,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れ等の消費
税額(控除対象仕入税額)を控除するものとしている(30条1項。関係
法令⑵)。5
イもっとも,課税仕入れ(事業として行う資産の譲受け等)は,課税資産
の譲渡等のために行われるばかりでなく,その他の資産の譲渡等(住宅の
貸付けなど,消費税を課さないこととされている資産の譲渡等)のために
も行われることがあり,後者(その他の資産の譲渡等のために行われる課
税仕入れ)については税負担の累積は生じないため,その課税仕入れに係10
る消費税額を控除する必要はない。そこで,消費税法は,課税売上高が5
億円を超え,又は課税売上割合が95%に満たない事業者について,個別
対応方式(30条2項1号)又は一括比例配分方式(同項2号)のいずれ
かによって控除対象仕入税額を算定とすることとしている(関係法令⑵ア,
イ)。15
これらのうち,個別対応方式は,事業者が当該課税期間中に国内におい
て行った課税仕入れ等につき,①課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課
税対応課税仕入れ),②その他の資産の譲渡等にのみ要するもの(非課税
対応課税仕入れ),③課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通し
て要するもの(共通対応課税仕入れ)のいずれかに当たるかにつき区分し20
た場合の控除対象仕入税額の算定方法であって,㋐課税対応課税仕入れに
区分したものについてはその消費税額の全部を,㋑共通対応課税仕入れに
区分したものについてはその消費税額に課税売上割合を乗じた額を,控除
対象仕入税額に含めるものとされている(消費税法30条2項1号。関係
法令⑵ア)。25
したがって,課税資産の譲渡等に要するものであることが明らかな課税
仕入れ等については,課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれ
に区分されるかによって,控除対象仕入税額に当該課税仕入れ等に係る消
費税額の全部を含めるのか,当該課税仕入れ等に係る消費税額に課税売上
割合を乗じた額のみを含めるのかが異なることになるところ,特に,課税
売上割合が低い事業形態の場合には,課税仕入れ等の用途区分による差異5
は大きなものとなる。
以上に鑑みると,課税仕入れの用途区分に係る判断は,税負担の累積の
排除という消費税法の目的に照らし,課税仕入れに係る消費税額について
税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観
点から,当該課税仕入れがいかなる取引のために行われたものであるのか10
を,その経済実態に即して適切に行うべきものである。
ウところで,消費税法30条2項1号が課税仕入れ等の用途区分につき「要
するもの」という文言を用いているのは,①課税仕入れ等に対応する取引
(資産の譲渡等)が必ずしも当該課税期間中に行われるとは限らないこと
や,②課税仕入れ等が事業者による経済活動の一環として行われるもので15
ある以上,将来における一定の取引を目指したものということができ,実
際に当該課税仕入れ等に対応するどのような取引が行われたか(あるいは,
行われなかったか)を見るまでもなく,当該課税仕入れ等がどのような取
引を目指して行われたかを見れば,用途区分を判定するのに十分であるこ
とによるものと解される。20
このような消費税法30条2項1号の文言及び趣旨に鑑みると,課税仕
入れ等の用途区分に係る判断は,当該課税仕入れ等を行った日(仕入日)
を基準に,事業者が将来におけるどのような取引のために当該課税仕入れ
等を行ったのかを認定して行うべきである。そして,かかる認定に当たっ
ては,税負担の判断が事業者の恣意に左右されることのないよう,①当該25
事業者の事業内容・業務実態,②当該事業者における過去の同種の課税仕
入れ等及びこれに対応して行われた取引の内容・状況,③当該課税仕入れ
等と過去の同種の課税仕入れ等との異同など,仕入日に存在した客観的な
諸事情に基づき認定するのが相当である。
⑵本件ビジネスモデル下における用途区分の認定について
ア問題の所在5
本件ビジネスモデルは,事業者が,中古の賃貸用マンション等の収益不
動産を購入し,適正な賃料で貸し付けて空室を可能な限り減らすというリ
ーシングを行った上で当該収益不動産を顧客に転売するというものであ
る(前提事実⑴)。したがって,本件ビジネスモデル下における課税仕入
れ(収益不動産〔建物〕の購入)が,将来における当該収益不動産(建物)10
の売却(課税資産の譲渡等)のために行われるものであることは,明らか
である。
もっとも,本件ビジネスモデル下で収益不動産を購入する事業者は,仕
入日に賃借人が存在する場合に自らその賃貸人たる地位を承継すること
により,また,仕入後にリーシングを行うことにより,当該収益不動産を15
転売するまでの間に賃料収入を得ることが見込まれるところ,住宅の貸付
けは「その他の資産の譲渡等」に該当することから,仮に,当該課税仕入
れの用途区分の判定において,かかる賃料収入が見込まれることをもって
当該課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものと評価す
ることとすれば,当該課税仕入れは共通対応課税仕入れに区分されること20
となる。
被告は,おおむね上記のような考え方に基づき,本件各課税仕入れが本
件ビジネスモデル下で行われていることや,本件各仕入日において本件各
マンションに賃借人が存在し,原告がその賃貸人たる地位を承継したこと
(前提事実⑵)から,原告が本件各マンションの賃料を収受することは確25
実であったものであり,そうである以上,本件各課税仕入れは共通対応課
税仕入れに区分すべきである旨を主張する。
イしかしながら,本件ビジネスモデルにおいて課税仕入れの目的が収益不
動産の売却にあることは明らかであるのに,当該事業における賃料収入の
位置付けや,賃料収入が売上げ全体に占める割合その他の個別の事情を一
切考慮せずに,将来の賃料収入が確実に見込まれるというだけで常に共通5
対応課税仕入れに区分すべきものと解するとすれば,経済実態と著しくか
い離するおそれがあるにとどまらず,上記⑴のような税負担の累積の排除
という消費税法の目的や,課税仕入れに係る消費税額について税負担の累
積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らし
ても,問題が生ずるといわざるを得ない。10
殊に,本件ビジネスモデルの下では,収益不動産を転売する際に,建物
だけでなく,その敷地の譲渡(土地の譲渡は非課税である。)も併せて行
われるのが通常であるため,転売による売上げ全体に占める建物の売上げ
の割合は相対的に低いものとならざるを得ず,したがって,事業者が当該
課税期間中に行う資産の譲渡等の対価のうちに課税資産の譲渡等が占め15
る割合(課税売上割合)も,これに応じた低いものとなることを免れない
(前提事実⑸。本件各課税売上割合は,約34~36%である。)。
そうすると,上記のような課税売上割合と,賃料収入額が売上げ全体に
占める割合とのギャップによって,建物の取得価格に対する消費税額のう
ち相当部分に税負担の累積が生じてしまうこととなるが,本件ビジネスモ20
デル下で仕入日に賃借人の存する収益不動産を購入する場合において,常
にこのような税負担の累積を許すこととすれば,税負担の累積の排除とい
う消費税法の目的を十分に達成し得ないこととなる。
なお,被告は,このような課税売上割合とのギャップの問題は,課税売
上割合に準ずる割合(消費税法30条3項)の利用によって解消すべきも25
のである旨を主張するが,課税売上割合に準ずる割合を用いるためには,
合理的な計算方法を定めて事前に所轄税務署長の承認を受けておかなけ
ればならないのであって,上記のような本件ビジネスモデル下における課
税売上割合とのギャップの問題が,課税売上割合に準ずる割合の利用によ
って解消し得るものとは直ちに解し難い。
ウ以上のような問題点を踏まえ,翻って検討すると,一般に,事業者が課5
税仕入れ等を行う場合に,当該活動が本来得ることを目的としている収入
(課税資産の譲渡等)のほかに,当該活動の過程で生じる他の収入(その
他の資産の譲渡等)が見込まれることにより,当該課税仕入れ等が共通対
応課税仕入れに区分されることとなるのか否かについては,一義的に解す
るのではなく,①他の収入が当該事業者の経済活動におけるどのような過10
程で得られ,その活動全体の中でどのように位置付けられているのか,②
他の収入が見込まれることが,課税仕入れ等やこれに対応する取引にどの
ような影響を及ぼしているのか,③全体の収入の見込額のうちに他の収入
の見込額が占める割合など,当該事業者が行う経済活動に関する個別の事
情を踏まえ,課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くもの15
とそうでないものとに適正に配分するという観点に照らし,他の収入が見
込まれることをもって当該課税仕入れ等につき「その他の資産の譲渡等」
にも要するものと評価することが相当といえるか否かを考慮して判断すべ
きである。
エそうすると,本件ビジネスモデル下における課税仕入れについては,仕20
入日に将来の賃料収入が確実に見込まれるというだけで直ちに共通対応課
税仕入れに区分されるものと解すべきではなく,上記ウのような当該事業
者が行う経済活動に関する個別の事情に基づく検討がされるべきであるか
ら,被告の上記アの主張は採用することができない。
そこで,以下,原告が行う事業に関する個別の事情を認定の上,本件各25
課税仕入れの用途区分につき検討する。
⑶認定事実
ア原告の事業の内容等(前提事実⑴,甲4,48,49,乙22)
概要
原告(原告のグループ会社を含む。以下,アにおいて同じ)は,富裕
層の個人投資家を対象にした不動産事業を行っており,①本件ビジネス5
モデルに基づく収益不動産販売事業(本件事業)と,②ストック型フィ
ービジネスの二つを主力事業としている。
本件事業の内容等
a収益不動産販売事業(本件事業)は,個人投資家の購買ニーズの強
い,首都圏に所在する5億円以下の住居系収益不動産(中古の賃貸用10
マンション等)を自己勘定で購入し,バリューアップを図った上でこ
れを顧客(個人投資家)に転売するというものである。仕入れた収益
不動産については,販売用の資産であることから,棚卸資産として計
上されている。
b原告が仕入れた収益不動産のバリューアップは,①リノベーション15
(改良工事を施すこと),②マネジメント(良好な状態に管理すること)
及び③リーシング(適正な賃料で貸し付けて空室を可能な限り減らす
こと)によって行われる。なお,リノベーションは,建物の外観や共
用部分,設備等について行うものであって,現に貸し付けられている
居室の内装について行うものではない。20
バリューアップの方法の中でも,リーシングは,不動産の収益力を
向上させるものであって,収益不動産を転売する上で重要な意義を有
している。収益不動産の購入者(個人投資家)は,表面利回り(満室
であるとした場合に想定される年間賃料収入を,当該収益不動産の購
入価格で除した割合による利回り)に基づいて投資判断を行うのが一25
般的であり,空室の多い不動産(表面利回りどおりの賃料収入を得ら
れない可能性が高い不動産)への投資をちゅうちょする傾向にあるた
め,リーシングにより空室を減らすことによって,売買契約の成立率
や転売価格を上げる効果がある。
c原告が収益不動産を仕入れるに当たっても,上記のようなリーシン
グによるバリューアップを経た上で顧客に販売することを想定してい5
るため,満室となった場合を想定した表面利回りを前提とした想定販
売価格に基づき,購入費(改修費用等を含む。)に対してどの程度の利
益が見込まれるかを検討した上で,販売用資産として仕入れるか否か
を決定している(甲56の3)。これに対し,当該収益不動産により原
告が得る賃料収入がどれだけ見込まれるかは,仕入時の判断において10
考慮に入れられていない。
また,原告が収益不動産を販売するに当たっては,市況や顧客との
交渉状況を踏まえつつ,想定販売価格にできるだけ近い値で販売でき
る状況になり次第,速やかに販売しており,賃料収入がどれだけ得ら
れるかは販売時期の決定等においても考慮に入れられていない。15
ストック型フィービジネスの内容等
aストック型フィービジネスは,本件事業で収益不動産を購入した顧
客に対し,不動産経営に関する各種のソリューションを提供するサー
ビス事業である。その内容は,①マネジメント業務の代行(管理,リ
ーシング,賃料徴収等),②不動産活用に関するコンサルティング(修20
繕プランの提案等),③不動産の鑑定評価に大別される。
b本件事業で購入した収益不動産から原告が得る賃料収入は,ストッ
ク型フィービジネスの収入として計上されている。なお,本件事業に
より購入した収益不動産は棚卸資産として計上され,減価償却の対象
とならないため,その購入代金が上記賃料収入の費用として計上され25
ることはない。
イ平成24年3月期から平成26年3月期までにおける本件事業の展開状
況(甲70)
原告は,本件各課税期間に先立つ平成24年3月期から平成26年3
月期までの各課税期間(以下「直近3課税期間」という。)において,本
件事業における転売を目的として,賃貸用マンション合計84棟(平成5
24年3月期が19棟,平成25年3月期が34棟,平成26年3月期
が31棟)を仕入れた。これらのマンションは,仕入日において,その
一部又は全部が住宅として貸し付けられており,原告は,その賃貸人た
る地位を承継し,その後転売までの間に生じた賃料を収受した。
原告は,上記各マンションについてバリューアップを行い,全84棟10
のうち83棟を仕入価格よりも高値で転売した(平成25年12月に購
入した1棟のみ,転売未了である。)。これらのマンションは,原告にお
ける会計処理上,いずれも棚卸資産に計上されていた。
直近3課税期間のそれぞれにおける,①購入時の入室率,②転売時の
入室率,③転売による収入(販売収入),④転売までの間に得た賃料収入,15
⑤転売までの保有期間(いずれも1棟当たりの平均値)は,次の表に記
載のとおりである。
①購入時の
入室率
②転売時の
入室率
③販売収入④賃料収入⑤保有期間
平成24年
3月期
79.5%86.9%270百万6百万4.9か月
平成25年
3月期
84.1%85.0%253百万9百万5.0か月
平成26年
3月期
71.9%83.8%388百万32百万8.9か月
これによれば,リーシングによる入室率の上昇は,平成24年3月期
が7.4%,平成25年3月期が0.9%,平成26年3月期が11.20
9%であり,これらを平均すると6.73%となる。なお,仕入日の稼
働率が6割を下回る場合でも,リーシングにより,転売時までに稼働率
が大幅に改善された例が散見される。
また,販売収入と賃料収入の総和(上記③+④)に占める賃料収入(上
記④)の割合は,平成24年3月期が2.17%,平成25年3月期が
3.44%,平成26年3月期が7.62%であり,これらを平均する5
と4.41%となる(なお,販売収入のうち建物部分を仮に3割とする
と,建物の販売収入と賃料収入の総和に占める賃料収入の割合は,平成
24年3月期が6.90%,平成25年3月期が10.60%,平成2
6年3月期が21.56%であり,これらを平均すると13.02%と
なる。)。10
なお,転売されるまでの保有期間(上記⑤)を平均すると,直近3課
税期間を通じて6.27か月となる。
ウ本件各課税期間における本件事業の展開状況(前提事実⑵,甲2の1~
3,22,50)
原告は,本件各課税期間において,本件事業における転売を目的とし15
て,本件各マンション合計84棟(平成27年3月期及び平成28年3
月期はいずれも26棟,平成29年3月期は32棟)を仕入れた。本件
各マンションは,本件各仕入日において,その一部又は全部が住宅とし
て貸し付けられており,原告は,その賃貸人たる地位を承継し,その後
転売までの間に生じた賃料を収受した。20
原告は,本件各マンションについてバリューアップを行い,全84棟
のうち80棟を仕入価格よりも高値で転売した(4棟は販売未了であ
る。)。本件各マンションは,原告における会計処理上,いずれも棚卸資
産に計上されていた。
本件各課税期間のそれぞれにおける,①購入時の入室率,②転売時の25
入室率,③販売収入,④賃料収入,⑤転売までの保有期間(いずれも1
棟当たりの平均値)は,次の表に記載のとおりである。
①購入時の
入室率
②転売時の
入室率
③販売収入④賃料収入⑤保有期間
平成27年
3月期
82.3%95.4%352百万15百万7.8か月
平成28年
3月期
79.7%92.8%413百万17百万6.9か月
平成29年
3月期
81.5%95.8%438百万14百万6.2か月
これによれば,リーシングによる入室率の上昇は,平成27年3月期
が13.1%,平成28年3月期が13.1%,平成29年3月期が1
4.3%であり,これらを平均すると13.5%となる。なお,仕入日5
の稼働率が6割を下回る場合でも,リーシングにより,転売時までに稼
働率が大幅に改善された例が散見される。
また,販売収入と賃料収入の総和(上記③+④)に占める賃料収入(上
記④)の割合は,平成27年3月期が4.09%,平成28年3月期が
3.95%,平成29年3月期が3.10%であり,これらを平均する10
と3.71%となる(なお,販売収入のうち建物部分を仮に3割とする
と,建物の販売収入と賃料収入の総和に占める賃料収入の割合は,平成
27年3月期が12.44%,平成28年3月期が12.07%,平成
29年3月期が9.63%であり,これらを平均すると11.38%と
なる。)。15
なお,転売されるまでの保有期間(上記⑤)を平均すると,直近3課
税期間を通じて6.97か月となる。
⑷本件各課税仕入れに係る用途区分の判定
上記⑶の認定事実を踏まえ,上記⑴及び⑵の観点に照らして,本件各課税
仕入れに係る用途区分を検討する。20
ア本件事業は,富裕層の個人投資家を対象とした本件ビジネスモデルによ
る収益不動産販売事業であり,仕入れた収益不動産(中古の賃貸用マンシ
ョン等)を転売時までにできるだけ満室に近づけるリーシングやリノベー
ション等のバリューアップを行うことにより,その収益力や資産価値を高
め,当該収益不動産の販売による利益を得ようとするものであって,原告
が仕入れた収益不動産を賃貸することは,販売のための手段として位置付5
けられるものである。そして,原告が得る賃料収入は,仕入れた収益不動
産を賃貸することによって不可避的に発生するものであり,上記のとおり
賃貸が収益不動産の販売のための手段であることに鑑みれば,収益不動産
の販売による利益を得るという本件事業の目的との関係において,副産物
というべきものである。10
イこのような賃料収入の位置付けは,原告の会計処理にも表れている。す
なわち,原告が仕入れた収益不動産を賃貸することによる賃料収入は,本
件事業による収入とは扱われず,ストック型フィービジネスの収入として
b),ストック型フィービジネスは,
本件事業で収益不動産を購入した顧客に対して展開される不動産経営に関15
する各種のサービス事業であり(同a),上記賃料収入はこれらの事業とも
関係がないから,実際には「その他」に近い取扱いがされているといえる。
また,原告が本件事業において購入した収益不動産は,棚卸資産として計
上され,減価償却の対象とならないため,その購入代金が賃料収入の費用
として計上されることもない(同b)。20
ウそして,原告が収益不動産を仕入れるに当たっても,当該収益不動産に
よる賃料収入がどれだけ見込まれるかは,仕入時の判断において考慮に入
なお,仕入時において空室が多かった
としても,転売時までのリーシングにより稼働率を改善することができる
ため(直近3課税期間及び本件各課税期間における実際の稼働率の改善状25
況を参照,収益不動産の空室状況が仕入時の判断
に及ぼす影響も小さいといえる。
エさらに,原告が収益不動産を販売するに当たっても,上記ウと同様に,
販売時期の決定等において原告が得られる賃料収入が考慮に入れられるこ
とはなく,当該収益不動産について販売できる状況が整い次第,速やかに
販売されている。そのため,直近3課税期間及び本件各課税期間における5
転売までの保有期間も,おおむね6~7か月
販売収入と賃料収入の総和に占める賃料収入の割
合も,直近3課税期間において4.41%,本件各課税期間において3.
71%(販売収入のうち建物部分を仮に3割として計算した場合の建物の
販売収入と賃料収入の総和に占める賃料収入の割合は,直近3課税期間に10
おいて13.02%,本件各課税期間において11.38%)にとどまっ
ている。
オ用途区分に係る小括
上記アからエまでに検討したところによれば,原告が本件事業において
仕入れた収益不動産を賃貸して得られる賃料収入は,当該収益不動産の販15
売を行うための手段としての賃貸から不可避的に生じる副産物として位
置付けられるものであって,このことは,原告の会計処理における取扱い
や,収益不動産の仕入れ及び販売の際に原告がどれだけ賃料収入を得られ
るかが考慮に入れられていないことからも裏付けられるものである。そし
て,原告が実際に得ている賃料収入も,販売収入と賃料収入の総和に対し20
て3課税期間の平均で5%未満(販売収入のうち建物部分を仮に3割とし
て,建物の販売収入と賃料収入の総和に占める割合を見ても,おおむね1
割程度)にとどまっている。また,これらに関しては,直近3課税期間と
本件各課税期間とで有意な差が見られない。
これらの事実関係に照らせば,本件各仕入日に上記のような賃料収入が25
見込まれることをもって,本件各課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡
等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは,本件事
業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく,課税仕入れに係る
消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に
配分するという観点に照らしても,相当性を欠くものといわざるを得ない。
したがって,本件各課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものと5
して課税対応課税仕入れに区分するのが相当であるから,本件各課税仕入
れに係る消費税額は,その全額が控除対象仕入税額となる。
カ被告の主張に関し
被告は,原告のウェブサイトに,「ストック型フィービジネスの収益に
は…中古物件を仕入れた後,販売するまでの間に確保できる賃料収入も含10
まれて」おり,「収益不動産残高の拡充を進め,賃料収入を増加させるこ
とで,安定した収益モデルへの転換を図って」いるとの記載があること(甲
4)を根拠に,本件各課税仕入れは将来の転売のみならず住宅の貸付けに
も要するものであったと主張する。
しかしながら,原告のウェブサイトにおける上記の記載は,いわゆるI15
R情報(投資家向け広報)として公にされたものであり(甲48),原告
の主力事業である収益不動産販売事業の拡大に伴い生ずる収益不動産残
高の増加という事態を,投資家からネガティブに捉えられないよう説明す
る趣旨と理解することができるものであって,かかる記載が存在するとい
うだけで,本件各課税仕入れが住宅の貸付けにも要するものであったと認20
めることはできない。そして,原告の事業に係る客観的な事実関係に照ら
し,本件各課税仕入れにつき共通対応課税仕入れに区分することが相当で
ないことは,以上に説示したとおりである。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
2本件各処分の適法性について25
⑴本件各更正処分に関し
上記1の判断並びに別紙4記載の被告が主張する課税の根拠及び計算(争
点となっている点を除く。)によれば,本件各課税期間に係る控除対象仕入
税額は,平成27年3月期については別表3-4(⑯欄)に記載のとおりと
なり,平成28年3月期及び平成29年3月期については,別表3-2(⑱
欄)及び3-3(⑱欄)に記載のとおり(申告額と同額)となる。そして,5
これらの控除対象仕入税額を前提にすれば,本件各課税期間の消費税等に係
る課税標準額及び納付すべき税額の計算は,別表2-4から2-6までに記
載のとおりとなる(納付すべき税額はいずれもマイナスとなるため,上記各
表の⑩欄及び⑱欄のとおり還付金が生じることとなる。)。
以上によれば,本件各更正処分のうち上記に認定した納付すべき税額を超10
える部分(ただし,平成27年3月期については申告額を超える部分〔原告
が取消しを求める部分と同じ。〕)は,争点⑵(平等取扱原則違反の有無)
について判断するまでもなく,違法であって,取消しを免れない。
⑵本件各賦課決定処分に関し
上記⑴の判断によれば,本件各更正処分によって新たに納付すべき税額は15
存在しないこととなるから,本件各賦課決定処分は,争点⑶(国税通則法6
5条4項にいう「正当な理由」の有無)について判断するまでもなく,同条
1項及び2項所定の課税要件を欠く違法なものであって,取消しを免れない。
第4結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるから,これらを認容するこ20
ととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部
裁判長裁判官清水知恵子
裁判官村松悠史及び裁判官松原平学は,転補のため,署名押印すること
ができない。
裁判長裁判官清水知恵子5
(別紙1)
指定代理人目録
指定代理人目録は記載を省略
(別紙2-1)






























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































使






























































































































使























(別紙2-2)














































































































































































































































































































































































































































































































































































(別紙2-3)






























































































































































































































調




















































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































(別紙3)
当事者の主張の要旨
1争点⑴(本件各課税仕入れの用途区分)について
(被告の主張の要旨)
⑴用途区分の判定基準
ア消費税は,生産,流通過程を経て事業者から消費者に提供される物品・サ
ービスの流れに着目し,製造,卸,小売等の各事業者が行う取引に課税する
ことを目的とするものであるところ,売上げに係る消費税額から仕入れに係
る消費税額を控除しないと,生産,流通の各段階で二重,三重に税が課され
る結果となる。そこで,消費税法30条1項は,このような税の累積を避け
るため,仕入税額控除の制度を設け,事業者が国内で課税仕入れ等を行った
場合の納付すべき消費税額の算定に当たり,当該課税仕入れ等を行った日の
属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から,当該課税期間中に国内
で行った課税仕入れ等の税額を控除することとしている。
事業者が行った仕入れが課税仕入れ等に該当するか否かは,仕入れを行っ
た日において判断されるべきものである。そして,課税仕入れ等に該当する
と判断された場合には,当該課税仕入れ等に係る消費税額は,対応する課税
資産の譲渡等が実際に行われたか否かにかかわらず,仕入れを行った日の属
する課税期間において,課税標準額に対する消費税額から控除されることに
なる。いわゆる費用収益対応の原則は,仕入税額控除においては採用されて
いない。
イ控除の対象となる税額を個別対応方式に基づいて計算する場合,課税期間
中に国内において行った課税仕入れ等について,その用途区分を明らかにす
る必要があるところ,消費税法30条2項1号は,かかる用途区分について,
「…要したもの」ではなく「…要するもの」と規定しており,課税仕入れ等
が実際にいかなる資産の譲渡等に用いられたかを問題としていない。
また,上記アのとおり,課税仕入れ等に該当するか否かは,仕入れを行っ
た日において判断すべきものであるから,当該課税仕入れ等に係る用途区分
についても,これと同様に,当該課税仕入れ等を行った日を基準に判定すべ
きである。
以上を踏まえれば,用途区分の判定に当たっては,当該課税仕入れ等を行
った日の状況に基づき,その取引が事業者において行う将来の多様な取引の
うちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解
するのが相当である。そして,このような判断は,将来の事情を想定して行
わざるを得ないものであるから,当該課税仕入れ等を行った日を基準に,当
該事業者における過去の同種の課税仕入れ等の状況や事業内容,あるいは当
該課税仕入れ等に係る一連の事情等から考察される当該課税仕入れ等の目
的・意図,さらに,客観的にみてその後に予定されているといえる取引の内
容といった事情を考慮して行うのが相当である。
⑵本件各課税仕入れの用途区分
本件各課税仕入れは,後記アのとおり,将来の転売(課税資産の譲渡等)に
要するものであるとともに,後記イのとおり,住宅の貸付け(その他の資産の
譲渡等)にも要するものであるから,共通対応課税仕入れに区分すべきである。
ア本件各課税仕入れが将来の転売(課税資産の譲渡等)に要するものである
こと
原告は,収益不動産を購入し,バリューアップを行った上で富裕層の個人
投資家に転売するとのビジネスモデル(本件ビジネスモデル)に基づく事業
を行っている。原告は,このような本件ビジネスモデルの下,本件各マンシ
ョンを譲り受け,会計処理上これらを棚卸資産(通常の営業循環過程におい
て販売又は費消される資産)として計上していたのであるから,原告は,本
件各マンションを譲り受けた日(本件各仕入日)の時点において,本件各マ
ンションを転売することを客観的に予定していたと認めるのが相当である。
したがって,本件各課税仕入れは,本件各仕入日において,原告が将来行
う「課税資産の譲渡等」に要するものであったというべきである。
イ本件各課税仕入れが住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)に要するもの
であること
本件各マンションは,いずれもその一部又は全部が住宅として貸し付けら
れていたところ,原告は,本件各マンションを譲り受けるに当たり,賃借権
付売買契約により上記の貸付けに係る賃貸人たる地位を承継しているのであ
るから,本件各仕入日の時点において,本件各マンションから賃料を確実に
収受することができる状況にあったというべきである。そして,原告が,本
件各仕入日以降の賃料を現に収受していることをも併せ考えれば,原告は,
本件各仕入日の時点において,本件各マンションから生ずる貸料を収受する
ことを客観的に予定していたと認めるのが相当である。
このことは,①原告のウェブサイト(甲4)に,「ストック型フィービジ
ネスの収益には…中古物件を仕入れた後,販売するまでの間に確保できる賃
料収入も含まれて」おり,「収益不動産残高の拡充を進め,賃料収入を増加
させることで,安定した収益モデルへの転換を図って」いるとの記載がある
ことや,②原告の常務取締役CFOが,その陳述書(甲48)において,原
告のいう「バリューアップ」には,「適正賃料でのリーシング(物件に賃借人
をできるだけ多く付けて家賃の滞納や空室をできるだけ減らすこと)」が含ま
れている旨陳述していること,すなわち,原告が賃料収入を得ることを意図
して事業を行っていたことからも裏付けられるというべきである。
以上のとおり,原告は,本件各マンションの譲受けに際し,本件各マンシ
ョンから生ずる貸料を収受することを客観的に予定していたと認められるの
であるから,本件各課税仕入れは,本件各仕入日において,原告が将来行う
「その他の資産の譲渡等」たる住宅の貸付けに要するものであったというべ
きである。
(原告の主張の要旨)
⑴用途区分の判断基準
ア控除対象仕入税額の計算において個別対応方式を用いる場合には,課税仕
入れ等の用途区分,すなわち,当該課税仕入れ等が①「課税資産の譲渡等に
のみ要するもの」(課税対応課税仕入れ),②「課税資産の譲渡等以外の資産
の譲渡等(その他の資産の譲渡等)にのみ要するもの」(非課税対応課税仕
入れ)及び③「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する
もの」(共通対応課税仕入れ)のいずれに対応するものであるかを明らかに
しなければならない(消費税法30条2項1号)。
ここで,上記①及び②に共通して用いられている「にのみ要するもの」と
いう文言を文理に即して解釈すれば,当該文言は,「その資産の譲渡等を行
わないのであればそもそも事業者はその課税仕入れ等を行わなかった」とい
う条件関係を意味するものと解される。そうすると,用途区分の判定につい
ては,その対象となる課税仕入れ等が,㋐課税資産の譲渡等との間でのみ条
件関係を満たす場合には課税対応課税仕入れに,㋑その他の資産の譲渡等と
の間でのみ条件関係を満たす場合には非課税対応課税仕入れに,㋒その双方
と条件関係を満たす場合には共通対応課税仕入れに,それぞれ区分されるも
のと解するのが相当である。
そして,このような条件関係の判断は,課税の累積の排除という仕入税額
控除の趣旨を適正に達成するため,現実に行われた個々の課税仕入れ等を前
提として,当該課税仕入れ等がされた日の状況により,様々な事情を考慮し
て個別具体的かつ客観的に行うべきである。
イなお,上記アの判断基準をコストの観点に引き直せば,課税対応課税仕入
れとは,課税資産の譲渡等による売上げをもって課税仕入れ等のコストを回
収することができる(コストについて条件関係が認められる)課税仕入れ,
すなわち,「その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストに入るような
課税仕入れ等」を意味するということになる。
また,事業者の目的(個別具体的かつ客観的に認定されるところの課税仕
入れ等の目的),という観点に引き直せば,①用途区分の判定は事業者の最
終的な目的(課税資産の譲渡等が達成できないのであればそもそも事業者は
その課税仕入れ等を行わなかったといえる〔すなわち条件関係が認められ
る〕課税資産の譲渡等)に基づいて判断すべきであり,②仮に副次的に得る
対価があったとしても,その副次的に得る対価はその判断を左右しない(副
次的な対価を得る資産の譲渡等が行われても行われなくても、事業者はいず
れにせよその課税仕入れ等を行っていたという場合には,その資産の譲渡等
との間に条件関係は認められない)ということができる。
⑵本件各課税仕入れの用途区分
本件各課税仕入れは,後記アのとおり,将来の転売(課税資産の譲渡等)と
の間では条件関係が満たされる一方,後記イのとおり,住宅の貸付け(その他
の資産の譲渡等)との間では条件関係が満たされないから,課税対応課税仕入
れに区分すべきである。
ア本件各課税仕入れと将来の転売(課税資産の譲渡等)との間に条件関係が
認められること
原告は,収益不動産を購入し,バリューアップを行った上で富裕層の個人
投資家に転売するとのビジネスモデル(本件ビジネスモデル)に基づく事業
を行っており,本件各マンションについても,本件ビジネスモデルの一環と
して将来の転売を前提に譲り受けたものである。そうすると,原告は,個人
投資家への転売たる課税資産の譲渡等を行わないのであれば,そもそも本件
各課税仕入れを行わなかったということができるから,本件各課税仕入れと
将来の転売(課税資産の譲渡等)との間には条件関係が認められる。
イ本件各課税仕入れと住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)との間に条件
関係が認められないこと
本件各マンションは,いずれもその一部又は全部が住宅として貸し付けら
れていたものであり,本件各仕入日において,原告が,将来,上記貸付けを
継続するとともに,空室に関してもバリューアップの一環としてのリーシン
グを行い,これらに係る賃料を得ていくであろうことが客観的に想定されて
いた。
しかし,本件ビジネスモデルにおいて,原告が仕入れた収益不動産を保有
期間中に貸し付けることは,当該収益不動産のバリューアップという将来の
転売のための前提ないしは手段にすぎないのであるから,かかる側面を条件
関係の判断において考慮することは相当でない(かかる側面はむしろ転売と
の条件関係の判断において考慮すべきである。)。そして,本件ビジネスモデ
ルに基づけば,原告は,バリューアップという観点を離れて賃料収入を得る
ためだけに住宅の貸付けを行うことはないのであるから,原告について,住
宅の貸付けたるその他の資産の譲渡等を行わないのであれば,そもそも本件
各課税仕入れを行わなかったということはできず,したがって,本件各課税
仕入れと住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)との間には条件関係が認め
られない。
2争点⑵(平等取扱原則違反の有無)について
(原告の主張の要旨)
⑴平等原則について規定する憲法14条1項は,法の執行段階における取扱い
の平等をも要請していると解されるから(平等取扱原則),同一の状況にある
納税者のうち,一方に対しては課税処分を行いながら,他方に対して課税処分
を行わないことは,かかる平等取扱原則に反し許されない。そうすると,税務
当局の対応が一貫性を欠く状況下において,特定の納税者を他の納税者よりも
不利益に取り扱う課税処分が行われた場合には,当該課税処分は,平等取扱原
則に反して違法となるというべきである。
⑵税務当局の現在の対応が一貫性を欠いていること
本件訴訟では,転売用マンションに係る課税仕入れの用途区分が問題となる
ところ,この点に関する税務当局の現在の対応は,およそ一貫性を欠いている。
すなわち,転売用マンションに係る課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分し
て消費税等の申告をした納税者の中には,①原告と同様に当該用途区分を一律
に否認された者がいる一方,②転売までの期間の長短等で否認の範囲が限定さ
れた者や,③原告とは逆に当該用途区分を一律に是認された者も存在する(こ
のことは,東京国税局や財務省〔旧大蔵省〕主税局での勤務経験を有するA税
理士の陳述書〔甲6〕や,原告訴訟代理人らが行ったアンケート調査の結果〔甲
28〕等から明らかである。)。
そうすると,原告に対してされた本件各更正処分は,税務当局の対応が一貫
性を欠く状況下において,原告を他の納税者よりも不利益に取り扱う課税処分
というべきであるから,平等取扱原則に反して違法である。
⑶税務当局の対応が過去と比較して一貫性を欠いていること
税務当局は,転売用マンションに係る課税仕入れの用途区分について,従前
は課税対応課税仕入れに区分するとの取扱いをしていたが(後記ア),平成17
年に突然これを変更し,共通対応課税仕入れに区分するとの取扱いをするよう
になった(後記イ)。そうすると,原告に対してされた本件各更正処分は,税務
当局の対応が過去と比較して一貫性を欠く状況下において,原告を他の納税者
よりも不利益に取り扱う課税処分というべきであるから,平等取扱原則に反し
て違法である。
ア税務当局が転売用マンションに係る課税仕入れを課税対応課税仕入れに区
分する取扱いをしていたこと
国税庁は,「買い取った分譲用マンションを分譲が完了するまで一時期賃貸
した」との事例における用途区分について,平成6年11月に実施した「全
国国税局消費税課長・統括国税調査官会議」における意見聴取を経た上で,
平成7年2月16日付けで,全国の国税局及び税務署に対し,課税対応課税
仕入れに区分して差支えない旨通知している(甲18,19。以下「平成7
年分譲マンション事例」という。)。
また,東京国税局は,平成9年,「賃借人が居住しているマンションを転売
目的でそのままの状態で購入した」との事例における用途区分について,照
会元の下級行政機関に対し,「本件の場合は…マンションを転売目的で取得し
たことが明らかである」から課税対応課税仕入れ等に区分される旨回答して
いる(甲21。以下「平成9年賃貸マンション事例」といい,平成7年分譲
マンション事例と併せて「本件過去事例」という。)。
このような本件過去事例に照らせば,税務当局が,転売用マンションに係
る課税仕入れを課税対応課税仕入れ等に区分する取扱いをしていたことは明
らかである。
イ税務当局が平成17年を境に取扱いを変更したこと
上記アのとおり,税務当局は,元々,転売用マンションに係る課税仕入れ
を課税対応課税仕入れに区分する取扱いをしていた。
しかし,平成17年11月5日,国税庁職員が執筆する「こんなときどう
する消費税Q&A」と題する加除式の文献に「現住建造物を転売目的で購
入した場合の仕入税額控除」と題する設例(事実関係は平成9年賃貸マンシ
ョン事例と同様である。)が追加され,同設例における課税仕入れは「建物の
転売という課税売上と住宅の家賃という非課税売上げのための課税仕入れ」
であるから共通対応課税仕入れに区分されるとの見解(従前と正反対の見解)
が突如として示されることとなった(甲31,乙12)。
また,上記の設例が追加された僅か5日後(平成17年11月10日)に
は,国税不服審判所においても,転売用マンションに係る課税仕入れは共通
対応課税仕入れに区分するのが相当であるとの初判断が示され(乙11の1),
その後も同種の裁決が引き続くようになった。
このような経緯に照らせば,税務当局が平成17年を境に転売用マンショ
ンに係る課税仕入れの用途区分を,課税対応課税仕入れから共通対応課税仕
入れへと変更したことは明らかである。
(被告の主張の要旨)
⑴ア憲法14条1項の下,各種の租税法律関係において,国民は平等に取り扱
われなければならならず(租税平等主義),具体的には,同様の状況にある
ものは同様に,異なる状況にあるものは状況に応じて異なって取り扱われる
必要がある(平等取扱原則)。もっとも,租税法の執行段階においては,租
税法律主義(憲法84条)の要請が働き,課税要件が充足されている限り,
租税を減免する余地はないのであるから,課税要件の充足する課税処分につ
いては,その余の事情にかかわらず,平等取扱原則違反の問題は生じないと
いうべきである。
イこれを本件についてみるに,前記1(被告の主張の要旨)及び別紙4(課
税の根拠及び計算)のとおり,本件各更正処分は,消費税法所定の課税要件
を充足するものであるから,同処分が平等取扱原則に反して違法となる余地
はないというべきである。
⑵アなお,税務当局(ないし被告)は,転売用マンションに係る課税仕入れの
用途区分が争点となった他の審査請求や訴訟において,当該課税仕入れは共
通対応課税仕入れに区分される旨一貫して主張してきており(甲10,乙1
1の1~3),つまりは,平等取扱原則に従って「同様の状況にあるものは
同様に取り扱っている」のだから,上記⑴イの点を措いたとしても,本件各
更正処分が平等取扱原則に反するものでないことは明らかである。
イこの点,原告は,本件過去事例の存在を根拠に,税務当局は,従前,転売
用マンションに係る課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分する取扱いをし
ていたが,平成17年を境にその取扱いを変更したと主張する。
しかし,上記主張の根拠として原告が摘示する証拠(甲18,19,21)
は,いずれも被告においてその存否を確認することができないものである。
この点を措いたとしても,平成7年分譲マンション事例は,課税仕入れを行
った日において当該マンションがいまだ貸し付けられていなかったという点
で,本件とは事案を異にするものであるし,平成9年賃貸マンション事例に
ついては,過去の誤った一事例であるにすぎない。
したがって,本件過去事例の存在を根拠に,税務当局が,過去に転売用マ
ンションに係る課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分する取扱いをしてい
たとか,平成17年を境にその取扱いを変更したなどということはできない。
3争点⑶(国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無)について
(原告の主張の要旨)
国税通則法65条4項の「正当な理由」が認められる場合とは,真に納税者の
責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照ら
してもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をい
うものと解される(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小
法廷判決・民集60巻4号1611頁等参照)。
これを本件についてみると,前記2(原告の主張)⑶記載のとおり,税務当局
は,転売用マンションに係る課税仕入れの用途区分という租税法規の解釈上微妙
な点を含む問題について,平成17年を境に課税上の取扱いを変更しているが,
変更後の取扱いを国民の間に定着させるための措置は何ら講じていない。このよ
うな事情に鑑みれば,原告が従前の取扱いに従って本件各課税仕入れを課税対応
課税仕入れに区分したことについて,その責めに帰することのできない客観的な
事情があることは明らかであって,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお,原
告に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというべきである。
そうすると,仮に本件各更正処分が適法であるとしても,納付すべき税額の計
算の基礎となった事実が本件各確定申告時における計算の基礎とされていなかっ
たことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認められ
るから,本件各賦課決定処分はその根拠を欠き違法である。
(被告の主張の要旨)
原告は,税務当局が,転売用マンションに係る課税仕入れの用途区分について,
平成17年を境に課税上の取扱いを変更したことを前提に,国税通則法65条4
項にいう「正当な理由」があると主張しているが,前記2(被告の主張の要旨)
のとおり,このような事実は認められないのであるから,原告の主張はその前提
を欠き失当である。
以上
(別紙4)
被告の主張する課税の根拠及び計算
1本件各更正処分の根拠及び適法性
⑴本件各更正処分の根拠
被告が主張する原告の本件各課税期間に係る消費税等の各課税標準額及び納
付すべき消費税等の額は,それぞれ次に述べるとおりである。
ア平成27年3月期に係る更正処分の根拠
課税標準額(別表2-1①C欄)35億4868万4000円
上記金額は,原告の平成27年3月期の消費税等の確定申告書(以下「平
成27年3月期申告書」といい,他の本件各課税期間の消費税等の確定申
告書についても同様に表記する。)に記載された金額と同額である。
課税標準額に対する消費税額(別表2-1②C欄)
2億1953万7883円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額であり,平成27年3
月期申告書に記載された金額と同額である。
a課税標準額に対する消費税額・税率4%適用分(別表2-1②A欄)
700万7320円
上記金額は,消費税法29条の規定に基づき,前記の金額のうち,
平成24年法律第68号5条の経過措置の適用を受ける課税資産の譲渡
等に係る課税標準額1億7518万3000円(別表2-1①A欄)に
税率100分の4を乗じて算出した金額であり,平成27年3月期申告
書に記載された金額と同額である。
b課税標準額に対する消費税額・税率6.3%適用分(別表2-1②B
欄)2億1253万0563円
上記金額は,消費税法29条の規定に基づき,前記の金額のうち,
前記aの金額を除いた課税資産の譲渡等に係る課税標準額33億735
0万1000円(別表2-1①B欄)に税率100分の6.3を乗じて
算出した金額であり,平成27年3月期申告書に記載された金額と同額
である。
控除対象仕入税額(別表2-1④C欄・別表3-1⑯C欄)
1億5992万4388円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額である。なお,本件各
課税期間に係る控除対象仕入税額の計算に当たっては,本件各課税売上割
合がいずれも100分の95に満たないことから,原告が本件各課税期間
を通じて選択した個別対応方式により計算する。
a控除対象仕入税額・税率4%適用分(別表2-1④A欄・別表3-1
⑮A欄)98万3827円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,平成24年法律第68号5条7項の経過措
置の適用を受ける消費税法30条1項所定の仕入れに係る消費税額の控
除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-1⑧A欄)△5万6539円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-1⑪A欄)
286万6755円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
b控除対象仕入税額・税率6.3%適用分(別表2-1④B欄・別表3
-1⑯B欄)1億5894万0561円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,消費税法30条1項所定の仕入れ(前記a
に含まれるものを除く。)に係る消費税額の控除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-1⑧B欄)
7801万1697円
上記金額は,次のⅰの金額からⅱの金額を減算した金額である。
ⅰ申告による課税対応課税仕入れの税額(別表3-1⑨B欄)
2億0995万3827円
上記金額は,平成27年3月期申告書に記載された金額と同額で
ある。
ⅱ前記ⅰの課税対応課税仕入れの税額から減算すべき金額(別表3
-1⑩B欄)1億3194万2130円
上記金額は,前記ⅰの金額に含まれた本件各課税仕入れに係る消
費税額(平成27年3月期の本件各マンションの取得価額の合計額
20億9431万9544円と,これに係る消費税等の額の合計額
1億6754万5554円との合計額22億6186万5098円
に108分の6.3を乗じて算出した金額。)であり,本件各課税
仕入れが,課税対応課税仕入れには区分されず,共通対応課税仕入
れに区分されることから,課税対応課税仕入れの税額に含まれない
ものである。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-1⑪B欄)
2億2300万1373円
上記金額は,次のⅰの算出根拠となった共通対応課税仕入れに係る
支払対価の額(税込み)10億9831万4758円,前記の本
件各課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)22億6186万50
98円及び「ユーコートB」の課税仕入れに係る支払対価の額(税込
み)4億6270万0832円との合計額38億2288万0688
円に108分の6.3を乗じた金額である。
なお,上記22億6186万5098円は,前記の税込金額で
あり,本件各課税仕入れが共通対応課税仕入れに区分されることから,
共通対応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含まれるべきもの
である。
また,上記「ユーコートB」の課税仕入れについて,原告は,平成
27年3月期申告書において非課税対応課税仕入れに区分し,仕入税
額控除の対象としていないが,その課税仕入れの日において,当該課
税仕入れにより,将来,「ユーコートB」の建物を住宅として貸し付け
ることによる賃貸収入(非課税資産の譲渡等)及び当該建物の居住者
に駐車場を賃貸することによる収入(課税資産の譲渡等)が生じるこ
とが予定されており,当該課税仕入れが共通対応課税仕入れに区分さ
れることから,共通対応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含
まれるべきものである。
ⅰ申告による共通対応課税仕入れの税額(別表3-1⑫B欄)
6406万8360円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額であ
る。
ⅱ共通対応課税仕入れの税額に加算すべき金額(別表3-1⑬B欄)
1億5893万3013円
上記金額は前記⒝の金額から前記ⅰの金額を控除した金額である。
c課税売上割合(別表3-1⑤C欄)
36.290747222(以下略)%
上記割合は,次のの金額のうちに⒝の金額の占める割合である。
資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-1④C欄)
98億9753万3090円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-1①C欄)
35億9188万8715円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引税額(別表2-1⑩C欄)5961万3400円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額(ただし,国税通則法
119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の
金額。後記イ及びウにおいて同じ。)である。
a差引税額・税率4%適用分(別表2-1⑨A欄)602万3493円
上記金額は前記aの金額から前記aの金額を控除した金額である。
b差引税額・税率6.3%適用分(別表2-1⑨B欄)
5359万0002円
上記金額は前記bの金額から前記bの金額を控除した金額である。
既に還付の確定した本税額(別表2-1⑪C欄)1465万0657円
上記金額は,平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき消費税額(別表2-1⑫C欄)7426万4000円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額(ただし,国税通
則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた
後の金額。後記イ及びウにおいて同じ。)である。
合計差引地方消費税の課税標準額(別表2-1⑮C欄)
5961万3400円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額(ただし,国税通則法
119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の
金額。後記イ及びウにおいて同じ。)であり,地方税法72条の82
の規定に基づく地方消費税の課税標準額である。
a地方消費税の課税標準額・税率4%適用分(別表2-1⑭A欄)
602万3493円
上記金額は,前記aの金額と同額である。
b地方消費税の課税標準額・税率6.3%適用分(別表2-1⑭B欄)
5359万0002円
上記金額は,前記bの金額と同額である。
納付すべき譲渡割額(別表2-1⑱C欄)1596万6600円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額(ただし,地方税法2
0条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨て
た後の金額。後記イ及びウにおいて同じ。)である。
a納付すべき譲渡割額・税率4%適用分(別表2-1⑰A欄)
150万5873円
上記金額は,地方税法72条の83(平成24年法律第69号1条に
よる改正前のもの。)の規定に基づき,前記aの金額に税率100分
の25を乗じて算出した金額である。
b納付すべき譲渡割額・税率6.3%適用分(別表2-1⑰B欄)
1446万0794円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,前記bの金額
に税率63分の17を乗じて算出した金額である。
既に還付の確定した譲渡割額(別表2-1⑲C欄)407万2865円
上記金額は平成27年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき譲渡割額(別表2-1⑳C欄)2003万9400円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額(ただし,地方税
法20条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り
捨てた後の金額。後記イ及びウにおいて同じ。)である。
納付すべき消費税等の額(別表2-1㉑C欄)9430万3400円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額であり,原告が平
成27年3月期に係る更正処分により新たに納付すべき消費税等の額で
ある。
イ平成28年3月期に係る更正処分の根拠
課税標準額(別表2-2①C欄)47億2440万2000円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
課税標準額に対する消費税額(別表2-2②C欄)
2億9763万7326円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額であり,平成28年3
月期申告書に記載された金額と同額である。
a課税標準額に対する消費税額・税率4%適用分(別表2-2②A欄)
0円
上記金額は,平成24年法律第68号5条の経過措置の適用を受ける
課税資産の譲渡等について,消費税法29条の規定に基づき算出される
金額であるが,前記の金額に,当該課税資産の譲渡等に係る金額が含
まれていないため生じないものであり,平成28年3月期申告書にはそ
の金額が記載されていない。
b課税標準額に対する消費税額・税率6.3%適用分(別表2-2②B
欄)2億9763万7326円
上記金額は,消費税法29条の規定に基づき,前記の金額に税率1
00分の6.3を乗じて算出した金額であり,平成28年3月期申告書
に記載された金額と同額である。
控除対象仕入税額(別表2-2④C欄・別表3-2⑲C欄)
1億8255万5815円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額である。
a控除対象仕入税額・税率4%適用分(別表2-2④A欄・別表3-2
⑱A欄)5783円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,平成24年法律第68号5条7項の経過措
置の適用を受ける課税仕入れについての消費税法30条1項所定の仕入
れに係る消費税額の控除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-2⑪A欄)1440円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-2⑭A欄)1万2847円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
b控除対象仕入税額・税率6.3%適用分(別表2-2④B欄・別表3
-2⑲B欄)1億8255万0032円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,消費税法30条1項所定の仕入れ(前記a
に含まれるものを除く。)に係る消費税額の控除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-2⑪B欄)
9639万9639円
上記金額は,次のⅰの算出根拠となった課税対応課税仕入れに係る
支払対価の額(税込み)48億1182万3890円から本件各課税
仕入れに係る支払対価の額(税込み)31億5929万1124円を
控除した16億5253万2766円に108分の6.3を乗じた金
額及び次のⅰの算出根拠となった課税資産の譲渡等にのみ要する特定
課税仕入れに係る支払対価の額3万0089円に100分の6.3を
乗じた金額の合計額である。上記31億5929万1124円は,平
成28年3月期の本件各マンションの取得価額の合計額29億252
6万9562円と,これに係る消費税等の額の合計額2億3402万
1562円との合計額であり,本件各課税仕入れが,課税対応課税仕
入れには区分されず,共通対応課税仕入れに区分されることから,課
税対応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含まれないものであ
る。
ⅰ申告による課税対応課税仕入れの税額(別表3-2⑫B欄)
2億8069万1621円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額であ
る。
ⅱ前記ⅰの課税対応課税仕入れの税額から減算すべき金額(別表3
-2⑬B欄)1億8429万1982円
上記金額は,前記の金額から前記ⅰの金額を控除した金額であ
る。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-2⑭B欄)
2億5478万3115円
上記金額は,次のⅰの算出根拠となった共通対応課税仕入れに係る
支払対価の額(税込み)12億0740万2783円と前記の本件
各課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)31億5929万112
4円との合計額43億6669万3907円に108分の6.3を乗
じた金額及び次のⅰの算出根拠となった課税資産の譲渡等と非課税資
産の譲渡等に共通して要する特定課税仕入れの金額94万1343円
に100分の6.3を乗じた金額の合計額である。上記31億592
9万1124円は,前記の本件各課税仕入れの税込金額であり,本
件各課税仕入れが,共通対応課税仕入れに区分されることから,共通
対応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含まれるべきものであ
る。
ⅰ申告による共通対応課税仕入れの税額(別表3-2⑮B欄)
7049万1133円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額であ
る。
ⅱ共通対応課税仕入れの税額に加算すべき金額(別表3-2⑯B欄)
1億8429万1982円
上記金額は,前記⒝の金額から前記ⅰの金額を控除した金額であ
る。
c課税売上割合(別表3-2⑤C欄)
33.813227180(以下略)%
上記割合は,次のの金額のうちに⒝の金額の占める割合である。
資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-2④C欄)
142億0610万5035円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-2①C欄)
48億0354万2569円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引税額(別表2-2⑩C欄)1億1508万1500円
上記金額は,次のbの金額からaの金額を控除した金額である。
a控除不足還付税額・税率4%適用分(別表2-2⑧A欄)
5783円
上記金額は,前記aの金額から前記aの金額を控除した金額であ
る。
b差引税額・税率6.3%適用分(別表2-2⑨B欄)
1億1508万7294円
上記金額は,前記bの金額から前記bの金額を控除した金額であ
る。
既に還付の確定した本税額(別表2-2⑪C欄)689万5404円
上記金額は平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき消費税額(別表2-2⑫C欄)
1億2197万6900円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額である。
合計差引地方消費税の課税標準額(別表2-2⑮C欄)
1億1508万1500円
上記金額は,次のbの金額からaの金額を控除した金額であり,地方税
法72条の82の規定に基づく地方消費税の課税標準額である。
a譲渡割額の還付額の基礎となる消費税額・税率4%適用分(別表2-
2⑬A欄)5783円
上記金額は,前記aの金額と同額である。
b地方消費税の課税標準額・税率6.3%適用分(別表2-2⑭B欄)
1億1508万7294円
上記金額は,前記bの金額と同額である。
納付すべき譲渡割額(別表2-2⑱C欄)3105万3800円
上記金額は,次のbの金額からaの金額を控除した金額である。
a還付すべき譲渡割額・税率4%適用分(別表2-2⑯A欄)
1445円
上記金額は,地方税法72条の88第2項(平成24年法律第69号
1条による改正前のもの。後記ウaにおいて同じ)の規定に基づき,
前記aの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。
b納付すべき譲渡割額・税率6.3%適用分(別表2-2⑰B欄)
3105万5301円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,前記bの金額
に税率63分の17を乗じて算出した金額である。
既に還付の確定した譲渡割額(別表2-2⑲C欄)186万0549円
上記金額は,平成28年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき譲渡割額(別表2-2⑳C欄)3291万4300円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額である。
納付すべき消費税等の額(別表2-2㉑C欄)
1億5489万1200円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額であり,原告が平
成28年3月期に係る更正処分により新たに納付すべき消費税等の額で
ある。
ウ平成29年3月期に係る更正処分の根拠
課税標準額(別表2-3①C欄)55億9437万4000円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
課税標準額に対する消費税額(別表2-3②C欄)
3億5244万5562円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額であり,平成29年3
月課税期間確定申告書の②「消費税額」欄(乙1の3・1頁)に記載された
金額と同額である。
a課税標準額に対する消費税額・税率4%適用分(別表2-3②A欄)
0円
上記金額は,平成24年法律第68号5条の経過措置の適用を受ける
課税資産の譲渡等について,消費税法29条の規定に基づき算出される
金額であるが,前記の金額に,当該課税資産の譲渡等に係る金額が含
まれていないため生じないものであり,平成29年3月期申告書にはそ
の金額が記載されていない。
b課税標準額に対する消費税額・税率6.3%適用分(別表2-3②B
欄)3億5244万5562円
上記金額は,消費税法29条の規定に基づき,前記の金額に税率1
00分の6.3を乗じて算出した金額であり,平成29年3月期申告書
に記載された金額と同額である。
控除対象仕入税額(別表2-3④C欄・別表3-3⑲C欄)
3億0866万0487円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額である。
a控除対象仕入税額・税率4%適用分(別表2-3④A欄・別表3-3
⑱A欄)4987円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,平成24年法律第68号5条7項の経過措
置の適用を受ける課税仕入れについての消費税法30条1項所定の仕入
れに係る消費税額の控除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-3⑪A欄)180円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-3⑭A欄)1万4097円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
b控除対象仕入税額・税率6.3%適用分(別表2-3④B欄・別表3
-3⑲B欄)3億0865万5500円
上記金額は,次のの金額に,⒝の金額にcの割合を乗じて計算した
金額を加算した金額であり,消費税法30条1項所定の仕入れ(前記a
に含まれるものを除く。)に係る消費税額の控除に関する金額である。
課税対応課税仕入れの税額(別表3-3⑪B欄)
1億8978万1892円
上記金額は,次のⅰの算出根拠となった課税対応課税仕入れに係る
支払対価の額(税込み)77億2002万0091円から本件各課税
仕入れに係る支払対価の額(税込み)44億6692万1381円を
控除した32億5309万8710円に108分の6.3を乗じた金
額及び次のⅰの算出根拠となった課税資産の譲渡等に要する特定課税
仕入れに係る支払対価の額28万2563円に100分の6.3を乗
じた金額の合計額である。上記44億6692万1381円は,平成
29年3月期の本件各マンションの取得価額の合計額41億3603
万8320円とこれに係る消費税等の額の合計額3億3088万30
61円との合計額であり,本件各課税仕入れが,課税対応課税仕入れ
には区分されず,共通対応課税仕入れに区分されることから,課税対
応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含まれないものである。
ⅰ申告による課税対応課税仕入れの税額(別表3-3⑫B欄)
4億5035万2306円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額であ
る。
ⅱ前記ⅰの課税対応課税仕入れの税額から減算すべき金額(別表3
-3⑬B欄)2億6057万0414円
上記金額は,前記の金額から前記ⅰの金額を控除した金額であ
る。
⒝共通対応課税仕入れの税額(別表3-3⑭B欄)
3億4853万8825円
上記金額は,次のⅰの算出根拠となった共通対応課税仕入れに係る
支払対価の額(税込み)15億0722万5241円と前記の本件
各課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)44億6692万138
1円との合計額59億7414万6622円に108分の6.3を乗
じた金額及び次のⅰの算出根拠となった課税資産の譲渡等と非課税資
産の譲渡等に共通して要する特定課税仕入れに係る支払対価の額74
万5075円に100分の6.3を乗じた金額の合計額である。上記
44億6692万1381円は,前記の本件各課税仕入れの税込金
額であり,本件各課税仕入れが,共通対応課税仕入れに区分されるこ
とから,共通対応課税仕入れの税額の算出根拠となる金額に含まれる
べきものである。
ⅰ申告による共通対応課税仕入れの税額(別表3-3⑮B欄)
8796万8411円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額であ
る。
ⅱ共通対応課税仕入れの税額に加算すべき金額(別表3-3⑯B欄)
2億6057万0414円
上記金額は,前記⒝の金額から前記ⅰの金額を控除した金額であ
る。
c課税売上割合(別表3-3⑤C欄)
34.106274659(以下略)%
上記割合は,次のの金額のうちに⒝の金額の占める割合である。
資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-3④C欄)
166億7092万5030円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
⒝課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(別表3-3①C欄)
56億8583万1479円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引税額(別表2-3⑩C欄)4378万5000円
上記金額は,次のbの金額からaの金額を控除した金額である。
a控除不足還付税額・税率4%適用分(別表2-3⑧A欄)4987円
上記金額は前記aの金額から前記aの金額を控除した金額である。
b差引税額・税率6.3%適用分(別表2-3⑨B欄)
4379万0062円
上記金額は前記bの金額から前記bの金額を控除した金額である。
既に還付の確定した本税額(別表2-3⑪C欄)
1億2791万4478円
上記金額は平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき消費税額(別表2-3⑫C欄)
1億7169万9400円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額である。
合計差引地方消費税の課税標準額(別表2-3⑮C欄)
4378万5000円
上記金額は,次のbの金額からaの金額を控除した金額であり,地方税
法72条の82の規定に基づく地方消費税の課税標準額である。
a譲渡割額の還付額の基礎となる消費税額・税率4%適用分(別表2-
3⑬A欄)4987円
上記金額は,前記aの金額と同額である。
b地方消費税の課税標準額・税率6.3%適用分(別表2-3⑭B欄)
4379万0062円
上記金額は,前記bの金額と同額である。
納付すべき譲渡割額(別表2-3⑱C欄)1181万5100円
上記金額は,次のbの金額から次のaの金額を控除した金額である。
a還付すべき譲渡割額・税率4%適用分(別表2-3⑯A欄)
1246円
上記金額は,地方税法72条の88第2項の規定に基づき,前記a
の金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。
b納付すべき譲渡割額・税率6.3%適用分(別表2-3⑰B欄)
1181万6365円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,前記bの金額
に税率63分の17を乗じて算出した金額である。
既に還付の確定した譲渡割額(別表2-3⑲C欄)
3451万6505円
上記金額は,平成29年3月期申告書に記載された金額と同額である。
差引納付すべき譲渡割額(別表2-3⑳C欄)4633万1600円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額である。
納付すべき消費税等の額(別表2-3㉑C欄)
2億1803万1000円
上記金額は,前記の金額と前記の金額との合計額であり,原告が平
成29年3月期に係る更正処分により新たに納付すべき消費税等の額で
ある。
⑵本件各更正処分の適法性
被告が主張する原告の本件各課税期間の納付すべき消費税額及び地方消費
税の譲渡割額は,それぞれ前記⑴のとおりであり,本件各更正処分における納
付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額といずれも同額であるから,本件
各更正処分はいずれも適法である。
2本件各賦課決定処分の根拠及び適法性
⑴本件各賦課決定処分の根拠
期限内申告書が提出された場合において,更正がされ,当初の申告に係る税
額より更正後の税額が上回ることとなったときには,その更正により納付すべ
き税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算
税を課することとされている(国税通則法65条1項)。そして,更正により
納付すべき税額が,その国税に係る期限内申告額に相当する金額と50万円と
のいずれか多い金額を超えるときは,当該超える部分に相当する税額に100
分の5の割合を乗じて計算した金額を加算することとされている(国税通則法
65条2項)。
前記1⑵のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,本件各更
正処分により,原告が新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実につき,
本件各更正処分前における税額の計算の基礎とされていなかったことについて,
国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
したがって,本件各更正処分に伴って原告に課されるべき過少申告加算税の
額は,以下述べるとおりである。
ア平成27年3月期1412万円
上記金額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,平成27年3月期に
係る更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額9430万円
(ただし,国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を
切り捨てた後の金額。後記イ及びウにおいて同じ。)に100分の10の割
合を乗じて算出した943万円と新たに納付すべき税額9430万3400
円のうち50万円を超える部分に相当する金額9380万円(ただし,国税
通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の
金額。後記イ及びウにおいて同じ。)に100分の5の割合を乗じて算出し
た469万円との合計額である。
イ平成28年3月期2320万8500円
上記金額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,平成28年3月期に
係る更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額1億5489
万円に100分の10の割合を乗じて算出した1548万9000円と新た
に納付すべき税額1億5489万1200円のうち50万円を超える部分に
相当する金額1億5439万円に100分の5の割合を乗じて算出した77
1万9500円との合計額である。
ウ平成29年3月課税期間3267万9500円
上記金額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,平成29年3月期に
係る更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額2億1803
万円に100分の10の割合を乗じて算出した2180万3000円と新た
に納付すべき税額2億1803万1000円のうち50万円を超える部分に
相当する金額2億1753万円に100分の5の割合を乗じて算出した10
87万6500円との合計額である。
⑵本件各賦課決定処分の適法性
被告が主張する本件各更正処分に伴って原告に課されるべき過少申告加算税
の額は,それぞれ前記⑴アからウまでのとおりであり,本件各賦課決定処分に
おける過少申告加算税の額といずれも同額であるから,本件各賦課決定処分は
いずれも適法である。
以上

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