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裁判例


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○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告が公調委昭和五六年(フ)第一号岩石採取計画認可処分取消裁定申請事件
につき、昭和五六年一二月一七日にした裁定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨の判決
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、昭和五六年一月九日付をもつて、被告に対し、高知県知事(以下「処
分庁」という。)が訴外田中オリビン礦業株式会社(以下「訴外会社」という。)
に対し昭和五五年八月一一日付でした岩石採取計画認可処分(以下「本件認可処
分」という。)の取消しを求める裁定申請をしたが(公調委昭和五六年(フ)第一
号事件)、被告は、昭和五六年一二月一七日別紙のとおり右申請を棄却する旨の裁
定(以下「本件裁定」という。)をした。
2 しかし、本件裁定は、以下の理由により取り消されるべきものである。
(一) (1)本件裁定は、「訴外会社が本件認可申請書に添付した訴外A作成の
「金山の所有権に係る証明書」(以下「本件証明書」という。)は、岩石採取計画
の認可を申請する採石業者が採石法第三三条の三第二項同法施行規則第八条の一五
第二項第七号の規定により、申請書に添付すべきものとされる「岩石採取場で岩石
の採取を行なうことについて申請者が権限を有することまたは権限を取得する見込
みが十分であることを示す書面」(以下「権限を示す書面」という。)に該当しな
いから、処分庁はかかる認可申請を却下すべき義務がある。」旨の原告の主張につ
いて、「採取計画認可申請書に右書面の添付が要求されるのは、採石権原がないか
又はこれを取得する見込みのない者を排除して無用な認可処分がされることを防止
しようとするに過ぎないものと解されるから、処分庁としては、認可処分当時何ら
かの事由により採石権設定者に実体上その権原のないことを知つている等特段の事
情が存在しない限り、右添付書面により採石権原又はその取得の見込みを一応認定
することが可能である以上は、更に進んで実体に立入つて審査する義務はないとい
うべきである。」としたうえ、訴外A・訴外会社間の採石権設定契約書及び本件証
明書をもつて「権限を示す書面」に該当するとした処分庁の判断は是認することが
できる旨判示し、
前記主張を排斥している。
(3) しかし、採取計画認可申請書に「権限を示す書面」の添付が要求される理
由は、本件裁定の説示するところにとどまるものではない。すなわち、採石権原又
はこれを取得する見込みのない者が採取計画認可申請をし、認可を得て岩石の採取
を行えば、当該土地の所有権等の財産権を侵害することは明らかであり、このよう
な違法な採石行為を事前に防止することも右書面の添付が要求される理由の一つで
あると解すべきである。
そして、本件認可申請書に添付された書面によれば、本件土地の登記名義人と訴外
会社に採石権を設定した者との間に不整合があること、すなわち、訴外会社は本件
土地の共有名義人の一人である訴外Aとの間に採石権設定契約を締結しているにす
ぎないことが明らかであるところ、この場合、前記「権限を示す書面」としては、
訴外Aが登記簿の記載にもがかわらず本件土地の単独所有者であることを証する書
面か、同訴外人以外の共有者全員も訴外会社に対し本件土地における採石を承諾す
る旨の契約書又は予約契約書しか考えられない。ところで、本件証明書は、訴外A
が自己の単独所有権を一方的に主張する書面にすぎず、右にいう単独所有者である
ことを証する書面にあたらないことは明らかであり、しかもこれに添付された資料
自体の中にも、訴外A以外の原告を含共有名義人が本件土地につき現に共有持分権
を有しており、本件土地が同訴外人の単独所有に属するものではないことを示す証
拠が見出されるのに、処分庁は、訴外A以外の共有名義人について事情聴取その他
何らの調査もしていない。また、同訴外人以外の共有名義人が訴外会社の本件土地
における採石を承諾する旨の書面は当然のことながら処分庁に提出されていない。
したがつて、本件認可申請書に添付されている書面は、「権限を示す書面」に該当
しないことが一見して明らかであり、処分庁としては、右書面によつては、訴外会
社の採石権原又はその取得の見込みをたとえ一応たりとも認定することができない
はずであるのみならず、かえつて、訴外会社に実体上採石権原のないことを極めて
容易に知りえたものというべきであり、本件認可処分は、認可申請書に「権限を示
す書面」の添付がないにもかかわらず行なわれた違法なものといわなければならな
い。
(3) 右の次第であるから、原告の前記主張を排斥した本件裁定は、採石法第三
三条の三第二項、同法施行規則第八条の一五第二項第七号の規定の解釈、適用を誤
つている。
(二) 本件裁定は、「採石権原のない訴外会社からされた本件認可申請は、原告
の財産権(共有持分権)を侵害することとなるから、採石法第三三条の四に定める
公共の福祉に反する場合にあたる。」旨の原告の主張について、右規定は、専ら公
益的見地から採取計画を規制しようとするための基準を定めるものであつて、私人
の土地所有権等を保護しようとするものではないとして、右主張を排斥している。
しかし、「公共の福祉」とは、個人の人権相互の間の矛盾、衝突を調整する原理と
しての実質的公平の原理をいうのであり、右規定の趣旨は、採石権を行使し財産的
利益を得る権利と他の権利、権益との調整を図ることにあるものと解されるから、
他の権利、権益を公益に限定する理由は全くなく、それが私人の土地所有権であつ
ても、右規定により保護されるべき十分な理由がある。しかも、本件においては、
訴外会社は、採石権原を有せず、採石により財産的利益を得る権利がそもそもない
のである。
したがつて、本件裁定は、右規定の解釈、適用を誤つている。
3 原告は、新たな証拠として、甲第一、第二号証を提出する。
原告は、本件土地の共有者であるB外一名と共に本件土地の不法占拠者を被告とし
て、高知地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起し、係争中であるが、右訴訟のため
の証拠資料を探索中、本件裁定がされた後である昭和五七年一月中旬ころ、Bが保
管する書類の中から甲第一、第二号証を発見した。原告は、それまで右証拠の存在
すら知らなかつたから、裁定委員会の審理に際して右証拠を提出することができ
ず、かつ、これを提出できなかつたことについて原告に過失はない。
右甲第一、第二号証は、訴外A作成の本件証明書の証載内容及びその添付資料と明
らかに相反するものであり、処分庁は、本件認可処分にあたり、調査をすれば、こ
れらを容易に入手することができ、これらと対比すれば、本件証明書が「権限を示
す書面」に該当しないことが一層明白となつたはずであるのに、漫然本件証明書の
みをもつて右書面に該当するものと判断したものである。したがつて、右証拠が裁
定委員会の審理において取り調べられていれば、本件裁定の判断は当然異なるもの
となつたはずであるから、さらに右証拠を取り調べるため、本件は裁定委員会に差
し戻されるべきである。
4 よつて、本訴請求に及んだ。
二、 請求原因に対する認否及び反論
1 請求原因1は認める。
2 (一)(1)同2(一)(1)は認める。
(2) 同2(一)(2)のうち、本件認可申請書に添付された書面によれば、本
件土地の登記名義人と訴外会社に採石権を設定した者との間に不整合があること、
処分庁が訴外A以外の共有名義人について格別の調査をしていないこと、同訴外人
以外の共有名義人による訴外会社の採石を承諾する旨の書面が処分庁に提出されて
いないことは争わないが、その余は争う。
採石法上岩石採取の権原につき都道府県知事に実質的審査を義務づけた規定がな
く、都道府県知事としては、私法上の権利関係である採石権原の存否を最終的に判
断する権限を有しないことにかんがみると、同法施行規則第八条の一五第二項第七
号の規定は、実体上採石権原のない者による違法な採石行為の防止までも目的とす
るものとはいえない。
処分庁としては、訴外会社と採石権設定契約を締結している訴外Aが本件上地の単
独所有者であることについては確信を抱くに至らなかつたものの、前記不整合を補
完するものとして提出された訴外A作成の本件証明書について、同書面の記載内容
だけでなく、従前訴外会社の操業につき何らの紛争も生じていないという経緯等を
も考慮した結果、本件証明書及び訴外A・訴外会社間の採石権設定契約書をもつて
認可申請に必要な「権限を示す書面」に該当すると判断したものであつて、処分庁
には、採石権原につき実質的審査義務がなく、その存否を最終的に判定する権限が
ないことにかんがみ、処分庁の右判断は是認されるべきである。
(3) 同2(一)(3)は争う。
(二) 同2(二)は争う。採石法第三三条の四の規定は、採石業の実施に伴う被
害防止のため、公共の福祉を優先する観点から、同条に規定する場合に限つて岩石
採取の自由を制限するものであるから、同条自体は、直接、私人の土地所有権等を
保護しようとするものではない。
3 同3は争う。
裁定委員会の審理においては、本件土地の所有権をめぐる経緯に関し、甲第一、第
二号証と同旨の本件証明書(添付資料を含む。)が提出されており、原告主張の損
害賠償請求訴訟の共同原告である本件原告としては、甲第一、第二号証のような証
拠の存否についても当然検討を行い、右審理当時右証拠の存在を知つていたか、又
は少なくとも容易に知りえたものというべきである。したがつて、右証拠の申出
は、鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律第五三条第一項第二号所定の
要件を具備しない不適法なものである。
仮に、右証拠の申出が右要件を具備しているとしても、本件裁定は、関係証拠によ
り、本件土地の権利関係につき紛争が存在し、訴外会社の採石権原が必ずしも明確
であるとはいい難い事実はこれを肯定しているのであり、本件の争点は、右紛争が
存在するにもかかわらず、本件証明書及び本件採石権設定契約書を、その記載内容
のほか従前の経緯等客観的事情をも総合考慮して「権限を示す書面」に該当すると
した処分庁の判断の当否にあるのであつて、右権利関係の存否自体にあるのではな
いから、甲第一、第二号証は、本件裁定の結論に影響を及ぼすものではなく、これ
を取り調べる必要がない。
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二 原告は、請求原因2において本件裁定が取り消されるべきものであると主張す
るので、以下検討する。
1 請求原因2(一)について。
本件認可申請書に添付された書面によれば、本件土地の登記名義人と訴外会社に採
石権を設定した者との間に不整合があること、処分庁が訴外A以外の共有名義人に
ついて格別の調査をしていないこと、同訴外人以外の共有名義人による訴外会社の
本件土地における採石を承諾する旨の書面が処分庁に提出されていないことは、い
ずれも当事者間に争いがない。
原告は、採石権原のない者による違法な採石行為を事前に防止することも、採石法
第三三条の三第二項、同法施行規則第八条の一五第二項第七号の規定が「権限を示
す書面」の添付を要求する理由の一つであると主張するが、採石法には、採石業者
からの岩石採取計画の認可申請を審査するにあたり、都道府県知事に私法上の権利
関係である申請者の採石権原の有無を審査する義務がある旨を定めた規定がないこ
と、また、都道府県知事には右採石権原の有無を最終的に判断する権限はなく、申
請に対し認可処分がされたからといつて、岩石の採取が禁止されていることに伴う
公法上の不作為義務が解除されるにとどまり、採石権原が新たに設定されるもので
ないことはもちろん、その存在が公権的に確定されることになるものではないこと
に照らすと、右規定が「権限を示す書面」の添付を要求する趣旨は、本件裁定が説
示するとおり、採石権原がないか、又はこれを取得する見込みのない者を可能なか
ぎり排除して無用な認可処分のされることを防止しようとすることにあるにすぎな
いものと解するのが相当であり、右規定が採石権原のない者による違法な採石行為
の防止を直接の目的とするものとは解されないというほかない。そして、右に述べ
た右規定の趣旨からすれば、都道府県知事としでは、認可処分当時何らかの事由に
より認可申請者に実体上採石権原のないことを知つている等の特段の事情がない限
り、添付された書面により採石権原又はその取得の見込みを一応認定することが可
能である以上は、更に進んで実体に立ち人つて審査する義務はなく、かつ、当該書
面がそれによつて右認定をすることのできる書面として、前記規定の要求する「権
限を示す書面」に該当するものであるか否かを判断するにあたつては、単に書面の
記載だけではなく、当該土地の現実の利用状況や認可申請者の操業をめぐる紛争の
有無など従前の経緯をも考慮に入れることかできるものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、本件裁定がその理由第二の二の(一)ないし(四)に
おいて認定した事実関係及びその説示するところによれば、訴外会社と採石権設定
契約を締結している訴外Aが本件土地の単独所有者であることについては紛争があ
り、訴外会社の採石権原が必ずしも明確であるとはいい難いものの、本件認可処分
当時処分庁において、訴外会社に採石権原のないことを知つていた等の前記特段の
事情は存しないというのであるから、右認定の事実関係、就中、本件土地の一部が
事実上分割占有されている状態であり、また、訴外会社の操業に関し従来何らの紛
争も生じていなかつたという客観的事情を訴外A・訴外会社間の採石権設定契約書
及び本件証明書と総合考慮するときは、右各書面により訴外会社の採石権原又はそ
の取得の見込みを一応認定することが可能であるというべきである。したがつて、
訴外A以外の共有名義人について格別の調査をすることなく、右各書面をもつて
「権限を示す書面」に該当するものとした処分庁の措置、判断はこれを是認するこ
とができ、右と同旨の本件裁定の判断は正当である。
よつて、原告の請求原因2(一)の主張は採用することができない。
2 請求原因2(二)について。
採石法第三三条の四は、「都道府県知事は、第三三条の認可の申請があつた場合に
おいて、当該申請に係る採取計画に基づいて行なう岩石の採取が他人に危害を及ぼ
し、公共の用に供する施設を損傷」、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益
を損じ、公共の福祉に反すると認めるときは、同条の認可をしてはならない。」と
定めているところ、右規定は、その文理に照らし、専ら公益的見地から採取計画を
規制するところにその趣旨があるのであつて、採石の行なわれる土地について私人
が有する所有権等の私法上の権利を保護しようとするものではないことは明らかで
ある。したがつて、本件において、仮に、訴外会社の採石行為により原告の本件土
地に対する共有持分権が侵害されることとなるとしても、これをもつて直ちに、右
規定にいう公共の福祉に反する場合に該当するものとすることはできない。右と同
旨の本件裁定の判断は正当であり、原告の請求原因2(二)の主張は採用すること
ができない。
三 原告は、新たな証拠として甲第一、第二号証を提出するが、記録によれば、本
件において裁定委員会の審理の終結した日は昭和五六年一一月六日であるところ、
原本の存在及び成立に争いのない乙第一号証の一ないし四、同第二号証の一、二、
同第三号証及び原告本人尋問の結果に右甲第一、第二号証の存在自体をあわせれ
ば、本件原告外二名を原告とし、四国車体工業株式会社外一名を被告とする高知地
方裁判所昭和五五年(ワ)第一五五号損害賠償請求事件外三件の併合事件におい
て、本件原告は、その訴訟代理人(松岡泰洪外一名)により、昭和五六年三月五日
の第八回口頭弁論期日に本件甲第一号証を甲第二五号証として、同年一〇月一日の
第一二回口頭弁論期日に本件甲第二号証を甲第四七号証としてそれぞれ提出してい
ることが認められ、右事実に照らすと、原告の前記新たな証拠の申出は、鉱業等に
係る土地利用の調整手続等に関する法律第五三条第一項第二号所定の要件を具備し
ているものとは認められないというほかないから、これを却下すべきである。よつ
て、原告の請求原因3の主張も失当である。
四 以上の次第で、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴
訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文
のとおり判決する。
(裁判官 鈴木 潔 河本誠之 松岡靖光)
公調委昭和五六年(フ)第一号
裁定
高知市<地名略>
申請人     C
右代理人弁護士 D
高知市<地名略>
処分庁     高知県知事
右代理人弁護士 E
右代理人    F
同       G
同       H
同       I
右当事者間の昭和五六年(フ)第一号岩石採取計画認可処分取消裁定申請事件につ
いて、当委員会は、次のとおり裁定する。
(原裁判等の表示)
○ 主文
申請人の申請を棄却する。
○ 事実
(事件関係人の申立て)
第一 申請人
処分庁が申請外田中オリビン礦業株式会社に対し昭和五五年八月一一日付けでした
岩石採取計画認可処分を取消すとの裁定を求める。
第二 処分庁
一 本案前の申立て
申請人の申請を却下するとの裁定を求める。
二 本案に対する答弁
申請人の申請を棄却するとの裁定を求める。
(事件関係人の主張)
第一 申請人の主張
一 申請外田中オリビン礦業株式会社(以下「申請外会社」という。)は、処分庁
に対し、昭和五五年五月一九日付けで高知市<地名略>、山林、一八万四、六六一
平方メートル(以下「本件土地」という。)を採取計画の対象地域に含む岩石採取
計画認可申請(以下「本件認可申請」という。)をし、これに対して処分庁は、同
年八月一一日付けで右採取計画の認可処分(以下「本件認可処分」という。)をし
た。
二 しかしながら、本件認可処分は、次の理由により違法であるから取消されるべ
きである。
(一) 申請人は、本件土地につき一七五分の一の割合による共有持分権を有する
者であるが、申請外会社は、本件認可申請にあたり、申請人との間で何ら採石契約
を締結せず、一切その同意を得ていないものであつて、本件認可申請は、右申請人
の財産権を侵害することとなるから、採石法第三三条の四に定める「公共の福祉に
反する」場合にあたることが明らかである。
(二) 本件認可申請をするにあたり、申請外会社が同法第三三条の三第二項に基
づき認可申請書に添付した申請外A作成「金山の所有権に係る証明書」(以下「本
件証明書」という。)は、同法施行規則第八条の一五第二項第七号に規定する「岩
石採取場で岩石の採取を行なうことについて申請者が権限を有することまたは権限
を取得する見込みが十分であることを示す書面」(以下「権限を示す書面」とい
う。)に該当しない。すなわち、申請人が本件土地につき一七五分の一の共有持分
権を有することは、土地登記簿謄本の記載から明らかであるのに対し、「本件証明
書」は作成者Aの単なる主張に過ぎず、申請人の共有持分権が同人に移転した過程
も不明であつて、到底右登記による推定を覆えずに足りないものであり、処分庁に
はこのような採石権原の不明確な申請を却下すべき義務がある。
三 裁定申請期間を徒過しているとの処分庁の主張は争う。
(一) 申請人が本件認可処分を知つたのは、昭和五五年一一月一四日であつて、
同日処分庁から申請人宛送付された同月一二日付け高知県知事作成「採石法第三三
条採取計画の認可についての異議申立書について」と題する書面中に本件認可処分
がされた旨記載されていたことによるものである。
申請人は、同年九月二二日処分庁に対して異議申立書を提出したが、この異議申立
ての対象となる処分は、申請人が採取現場の標識によつて知つた昭和四九年一月二
一日及び同五四年一月の各認可処分である。申請人としては、右五四年認可処分の
認可期間が同年二月一日から同五七年一月三一日までの三年間となつていたため、
前記異議申立て当時既に本件認可処分がされていることを全く予想できず、そのた
め右申立書には本件認可処分を表示しなかつたものである。
また、申請人は、昭和五五年五月ころ、J県会議員に対し、申請外会社による本件
土地の採石問題について相談したが、その後同議員から「本件証明書」のコピーを
渡されただけで、同議員は他言を禁じられているとして「本件証明書」入手の経緯
や本件認可申請との関連等については何ら説明せず、その後同議員との関係は解消
している。したがつて、同議員から本件認可処分について知らされた事実はない。
なお、申請人は、本件認可処分を掲示した標識は見ていない。
(二) 仮に、処分庁主張の時期までに申請人が本件認可処分の存在を知つたとし
ても、前記異議申立書は、利害関係人である申請人の書面による不服申立方法につ
いての教示の請求と解されるところ、これに対する処分庁の口頭及び書面のいずれ
による教示においても、裁定の申請期間については教示されていない。これは右期
間の定めがない旨の教示と解することができるから、したがつて、鉱業等に係る土
地利用の調整手続等に関する法律第二五条第五項により本件裁定申請は、期間内に
されたものとみなされるべきである。
四 申請利益がないとの処分庁の主張は争う。
採石法施行規則第八条の一五第二項第七号が、岩石採取計画認可申請にあたり添付
すべき書類として「権限を示す書面」を定めた目的は、単に無用な申請を排除する
ことだけにとどまらず、採石権原がないのにあえて岩石を採取することにより、必
然的に当該土地所有者らの財産権を侵害する結果となる事態を抑止することをも目
的とするものである。岩石採取計画の認可申請は、現実の採石行為を前提とするも
のであり、右認可処分があれば、採石権限がないにもかかわらず事実上認可を受け
た者が採石行為に着手する可能性は十分考えられるから、認可処分権者である処分
庁が事前に違法な採石計画を認可しないことによつて、土地所有者らの財産権が保
全される結果となる。したがつて、申請人は、違法な本件認可処分により法律上保
護された右利益を侵害された者として裁定申請の利益を有するものである。
五 処分庁の主張三(本件認可処分の経緯)の事実中(一)の事実は不知、同
(二)の事実中本件土地が共有者の協議により分割されたとの点は否認、その余の
事実は不知。
申請人は、分割の協議に参加していないし、分割につき何らの同意も与えていな
い。四国運輸株式会社らの占有者は、本件土地の一部を勝手に占有使用しているに
過ぎない。なお、本件土地に係る採取計画認可処分に対する異議申立てとしては、
昭和五五年九月二二日付けのものが最初である。
第二 処分庁の主張
一 本案前の申立ての理由
(一) 裁定申請期間の徒過について
本件認可処分の日は、昭和五五年八月一一日であるが、申請人は、遅くとも同年九
月二七日までに本件認可処分があつたことを知つたものであるから、本件裁定申請
は、申請期間を徒過してされた不適法なものである。
すなわち、申請外会社は、同年八月一八日以降採取場の標識に本件認可処分の内容
を掲示しているから、日ごろ同所付近を通行し、この問題に関心を持つている申請
人は、当然右標識を見ていると考えられる。また、申請人の依頼を受けたJ県会議
員に対し、処分庁担当者は、「本件証明書」ほか関係資料を示して事情を説明した
上、右証明書のコピーを同議員に手交し、その後同年八月一五日ころ、同議員に対
し、同月一一日本件処分がされた事実を伝えている。そして、同年九月二二日申請
人から提出された異議申立書には、同議員に手交した前記証明書のコピーに基づく
ものとしか考えられない「A氏の金山所有権に係る証明書について」と題する書面
が添付されているのであつて、このような経過に照らすと、申請人は、同議員を通
じて本件認可処分の経緯を逐一知つていたものである。このことは、右の異議申立
書中に「新らたな採取の認可をされておられる時は」という記載があることからも
明らかである。更に、処分庁担当者は、同年九月二七日処分庁を訪れた申請人に対
し、本件認可処分がされたことを伝えたところ、申請人は、前記異議申立てには本
件認可処分も含まれているから取消されたいと申し述べ、これに対して担当者が、
更に、裁定申請庁は国の公害等調整委員会である旨を教示した。申請人は、その後
も再三担当者を訪れており、その都度右の趣旨を説明し、前記異議申立書を返戻し
ようとしたが、申請人は正式な書面で返して欲しいと述べて受領しなかつたため、
同年一一月一二日付け書面で同申立書を返戻したものである。このような経過にか
んがみると、申請人は、遅くとも同年九月二七日までに、本件認可処分がされた事
実を知つたのみならず、これに対する裁定の申請庁をも知つたものであるから、申
請期間の徒過につき何らの正当事由も存在しないものである。
(二) 申請利益の不存在について
採石法第三九条第一項の規定によつて裁定の申請ができるのは、同条に定める処分
に対し不服を申立てる法律上の利益を有する者、すなわち、当該処分によつて自己
の権利若しくは法律上保護された利益を侵害された者に限られると解すべきであ
る。ところで、同法第三三条の認可は、岩石採取に伴う災害防止等に関する設備に
ついての事前審査のために、岩石採取を一般的に禁止し、認可基準に達する設備を
有する者について、これを解除して適法に採取できることとしたものであつて、何
ら権利を設定するものではなく、単に不作為義務を解除するにとどまる。同法第三
三条の三は、岩石採取計画の認可申請をする場合には、通商産業省令で定める書類
を添付すべさ旨を規定し、これを受けて採石法施行規則第八条の一五第二項第七号
は「権限を示す書面」を定めているが、この規定は、行政上の規制の一つとして、
岩石採取計画に係る土地において、岩石を採取する権原のないことが明らかな者に
よる無用な申請を排除することを目的としたものであり、右規定によつて認可を受
けた者が何らかの私法上の権利を取得するものではない。したがつて、本件認可に
より申請人主張の財産権を侵害することはあり得ないから、本件裁定申請は、その
利益を欠き不適法である。
二 申請人の主張に対する認否
一 の事実は認める。
二 の事実中、申請人が本件土地につき登記簿上その主張する共有持分権を有する
ことは認める。申請人と申請外会社との間に採石契約が存在しないとの点は不知。
その余の申請人主張事実は争う。
三 本件認可処分の経緯
(一) 申請外会社は、昭和四五年六月一八日四国通商産業局長に対して本件土地
を含む区域の採石業着手届を提出し、同年七月二三日受理され、以後現在まで右区
域で採石業を営んでいる。この間いずれも本件土地を含む右区域につき、昭和四八
年一月三〇日、同四九年一月三一日、同五一年一月二九日、同五四年一月一二日に
それぞれ採取計画の認可を受けている。
(二) 右昭和五四年認可処分の認可期間は、同年二月一日から同五七年一月三一
日までとなつていたが、申請外会社は、採取区域を拡張する必要が生じたため、右
期間経過前の同五五年五月一九日処分庁に対し、本件認可申請書を提出した。
右申請書には、「権限を示す書面」として、申請外会社と本件土地所有者であるA
との間の採石権設定契約書が添付されていた。ところで、本件土地は、もと高知市
布師田金山共有山組合員一七五名の共有であつたが、その後共有者の協議に基づい
て事実上分割され、現在の登記名義人三四名のうち二四名は、本件土地の一部を現
実に占有しており、この占有部分は実際の採取区域外である。しかし、他の非占有
者一〇名については、その権利関係が不明確であつたため、この点を明確にするよ
う指導した結果、申請外会社から右添付書類を補充する書類として「本件証明書」
が提出された。
処分庁は、本件土地の前記利用状況及び申請外会社に対しては、既に、昭和四八年
一月以降四回にわたり岩石採取計画を認可してきたにもかかわらず、これまで何ら
紛争を生じていないこと等の事情を総合して、前記契約書及び「本件証明書」をも
つて「権限を示す書面」に該当するものと判断した。
そこで、処分庁は、関係市長である高知市長及び南国市長の意見を聴いた上、現地
調査、関係行政機関との協議結果等を総合審査し、昭和五五年八月一一日本件認可
処分をしたものである。
(証拠関係)(省略)
○ 理由
第一 処分庁の本案前の申立てに対する判断
一 申請期間徒過の違法について
本件認可処分に対する申請人の裁定申請が昭和五六年一月一二日にされたことは、
当委員会に顕著であるところ、処分庁は、申請人が本件認可処分のあつたことを知
つたのは、遅くとも昭和五五年九月二七日であると主張し、これに対して、申請人
は、同年一一月一四日処分庁から送付された書面によつて、本件認可処分の存在を
知つた旨主張するので、この点につき検討すると、申請人本人は、その審問におい
て右主張の日に処分庁から送付のあつた書面により初めて本件認可処分の存在を知
つたものであつて、それまでは、採取現場の標識等によつて昭和四九年一月及び同
五四年一月の各認可処分についてだけ知つていたこと、そのため、同年九月二二日
処分庁に提出した異議申立書も右各認可処分を対象としたものであること、J県会
議員からは、「本件証明書」のコピーをもらつたが、その入手の経緯や本件認可申
請との関連については説明を受けられず、本件認可処分についても知らされなかつ
たこと及び処分庁担当者からは、同月末ころ、裁定申請庁の教示を受けただけで、
本件認可処分については知らされず、申請人としては、右教示も、前記昭和四九年
及び同五四年各認可処分に対する異議申立てに関するものと考えていたこと等の諸
事実を陳述している。そして、当事者間に争いのない前記昭和四九年、同五四年各
認可処分の存在及び五四年認可の認可期間が昭和五七年一月三一日までとされてい
た事実、成立に争いのない甲第一〇号証、乙第四号証(昭和五五年九月二二日付異
議申立書)には、右従前の各認可処分は掲げられているが、本件認可処分には触れ
ていないこと、参考人Gの審問における陳述によつて認められる、処分庁担当者に
おいて、本件認可処分に関しては他言しないようJ県会議員に要望している事実及
び申請人本人の法律的知識が十分でないこと等の諸点を考慮すると、申請人本人の
右陳述内容は必ずしも不合理、不自然なものとはいえない。処分庁は、申請人が採
取現場の標識によつて本件認可処分の存在を知つていたと思われること、J県会議
員を通じて本件認可処分の経緯を知つていたこと及び処分庁担当者において、申請
人に対し、本件認可処分のあつたことや裁定申請庁につき再三説明していること等
を主張し、前記Gも、これに副う陳述をしているけれども、現場標識やJ県会議員
によつて本件認可処分を知つたという点は、推測の域を出ないものであり、また、
処分庁担当者の口頭による説明の点についても、右Gの陳述によれば、申請人が前
記異議申立書を理由を付した正式な書面で返戻するよう求めていることが認めら
れ、申請人が担当者の口頭による説明だけで果して本件認可処分の存在を確知した
といえるか甚だ疑問であり、結局右Gの陳述によつても申請人本人の前記陳述の信
用性を左右するに足りず、他に処分庁の主張に副う証拠はない。したがつて、申請
人が本件認可処分を知つたのは、申請人主張のとおり、昭和五五年一一月一四日で
あるというべきであつて、その後所定の六〇日以内に本件裁定申請がされているの
であるから、申請期間徒過の違法はない。
二 申請利益不存在の違法について
処分庁は、採石法第三三条の採取計画認可処分は、一般的な岩石採取禁止の不作為
義務を解除するにとどまり、認可を受ける者に対して何ら私法上の権利を賦与する
ものではないから、本件認可処分により申請人の権利を侵害することはあり得ず、
本件裁定申請は、その利益を欠く旨主張するので、この点につき検討する。
一般に、行政処分に対して不服申立ができるのは、当該処分によつて自己の権利若
しくは法律上保護された利益を侵害され、又はこれを侵害されるおそれのある者に
限られ、単に反射的ないし事実上の不利益を被るに過ぎない者はこれに含まれない
ものと解される。そして、採石法第三三条の認可処分が一般的な岩石採取禁止の不
作為義務を解除するにとどまり、認可を受けた者がこれによつて私法上採石する権
原を取得するものでないことは、処分庁が主張するとおりである。
しかしながら、このことから直ちに、採石権原のない者に対する認可が、当該土地
の所有者の法的地位ないし状態に何らの不利益も及ぼさないとは速断できない。す
なわち、採取計画の認可によつて、土地所有権の行使が妨げられる採石の権原が設
定されるものではないとしても、その認可を受けた採石業者に岩石採取の途を開
き、通常、当該土地において採取計画に基づき採石行為に及ぶに至ることは当然予
想されるところであり、その蓋然性は極めて高いものといわざるを得ない。そし
て、もし採石行為がされるに至れば、これに同意していない土地所有者がその所有
権を侵害されることとなることは明らかである。したがつて、このような結果を通
常伴う採取計画の認可によつて、土地所有者が法律上の不利益を被るであろうこと
は、これを否定することはできない。もつとも、土地所有者としては、不法に採石
行為に及ぶ者に対し、私法上、妨害排除等の物権上の請求ないし不法行為上の損害
賠償の請求をすることは可能であろうが、このことは別個の問題であつて、この故
をもつて採石計画の認可がなされることにより被るであろう不利益を否定する理由
とすることはできない。
殊に、本件においては、申請外会社が長年にわたり本件土地において採石事業を行
い、更に採取区域を拡張してこれを継続するために認可申請に及んだものであるこ
とは処分庁の自認するところであるから、申請外会社において本件認可処分に基づ
き引き続き採石事業を継続するであろうことは必至であるとみられる。したがつ
て、申請人が本件土地に共有持分権を有するか否かは争いのあるところであるが、
申請人においてその権利を有することを主張し、本件認可処分によりこれを侵害さ
れることを理由として裁定申請をしている以上、申請人にはこれが申請をする利益
を有するものというべきであるから、処分庁の主張は理由がない。
第二 本件認可処分の当否
一 申請人は、本件認可処分は、採石権原のない申請外会社に対してされているか
ら、申請人の共有持分権を侵害するものであり、採石法第三三条の四に定める「公
共の福祉に反する」場合の基準に違反すると主張する。しかしながら、同条によつ
て認可してはならない場合とされるのは、当該申請に係る採取計画に基づいて行う
採石行為が他人に危害を及ぼし、公共の用に供する施設を損傷し、又は農業、林業
若しくはその他の産業の利益を損じ、かつ、公共の福祉に反する場合をいい、それ
は専ら公益的見地から採取計画を規制しようとするための基準であつて、私人の土
地所有権等を保護しようとするためのものではない。したがつて、採石行為により
個々の私法上の権利が侵害されることとなることをもつて、直ちに右の基準に違反
するものとはいえないから、右主張は失当である。
二 申請人は、本件認可申請にあたり、申請外会社が申請書に添付した「本件証明
書」は、作成者Aの単なる主張に過ぎず、「権限を示す書面」に該当しないから、
かかる申請は却下すべき義務があると主張する。
(一) 申請外会社が昭和五五年五月一九日付けで処分庁に対し、本件認可申請を
し、これに対し、処分庁が同年八月一一日付けで本件認可処分をしたこと、申請人
が本件土地につき登記簿上一七五分の一の割合による共有持分権を有すること及び
申請外会社が本件認可申請にあたり、申請書に「本件証明書」を添付したことは、
当事者間に争いがなく、参考人Gの陳述によつて成立を認め得る乙第一号証の二
(契約書)及び同人の陳述によれば、申請外会社は、当初「権限を示す書面」とし
て前記Aとの間の採石権設定契約書を添付して提出したが、処分庁において登記簿
上共有名義となつていることとの不整合を指摘した結果、採石権原の点を補充する
書面として「本件証明書」を追加提出したことが認められる。
(二) 前記Gの陳述により成立を認め得る乙第二号証(「本件証明書」)、成立
に争いのない甲第一号証の一(登記簿謄本)、第七号証(共有者住所氏名持分表
写)、第二〇号証(訴状写)、前記G及び申請人本人の各陳述によれば、本件土地
は、もと高知市布師田地区民一七五名の共有山林であり、共有者で構成される金山
共有山管理組合がこれを管理していたものであるが、昭和四二年六月一五日の組合
総会において、出席組合員八九名の賛成により代金一、五〇〇万円で金山温泉開発
株式会社に売却することを決め、同四四年右代金のうち共有組合員一六九名分とし
て一、四四八万五、六六六円を受領し、その後順次共有持分権移転登記手続を進め
たこと、しかし、共有組合員中申請人を含む一部の者は、これに応ぜず、その後同
会社も右移転登記未了者も持分権の譲渡を重ねた結果、本件認可申請当時登記簿上
の共有名義人は三四名を数え、そのうち二四名については、本件認可処分の対象区
域外の部分を各自占有使用していること、申請人と他の共有名義人二名は、前記認
可対象区域外の占有者らを被告として、共有持分権に基づく損害賠償訴訟を昭和五
五年四月高知地方裁判所に提起していること並びに「本件証明書」には、前記会社
による買収とその後の持分権移転の経過及び右認可対象区域内の土地が総て前記A
の単独所有であり、登記簿上の共有者は単に移転登記手続が未処理であるに過ぎ
ず、この点について紛争が生じた場合は、同人が責任をもつて対処する旨記載され
ていることが認められる。
(三) 本件土地を対象区域とする岩石採取計画認可処分に対する申請人の最初の
異議申立てが昭和五五年九月二二日付けの異議申立書であることは、当事者間に争
いがなく、また、前記Gの陳述によれば、申請外会社は、昭和四五年九月以降現在
まで採石を継続しており、この間通商産業局長への届出及び処分庁による認可が繰
り返されて来たこと並びに処分庁は、前記Aの単独所有に確信を抱くに至らなかつ
たが、申請外会社による操業に関してこれまで何らの紛争も生じていないことにか
んがみ、これ以上の資料の提出は望めないとの考えから、前記契約書及び「本件証
明書」をもつて「権限を示す書面」に該当するものと判断したことが認められる。
(四) 以上の事実によれば、本件土地の権利関係については紛争が存在し、申請
外会社の採石権原が必ずしも明確であるとはいい難い。しかし、処分庁が採石法第
三三条の三第二項、同法施行規則第八条の一五第二項第七号の規定により添付を必
要とする「権限を示す書面」に該当するか否かを判断するについては、私法上の権
利関係たる採石権原の存否を最終的に判断する権限はなく、また、採取計画認可申
請書に右書面の添付が要求されるのは、採石権原がないか又はこれを取得する見込
みのない者を排除して無用な認可処分がされることを防止しようとするに過ぎない
ものと解されるから、処分庁としては、認可処分当時何らかの事由により採石権設
定者に実体上その権原のないことを知つている等特段の事情が存在しない限り、右
添付書面により採石権原又はその取得の見込みを一応認定することが可能である以
上は、更に進んで実体に立入つて審査する義務はないというべきである。そして、
他方、右の判断にあたつては、単に書面の記載だけではなく、当該土地の現実の利
用状況や認可申請者の操業をめぐる紛争の有無なと従前の経緯をも考慮に入れて当
該書面が前記法令の求める添付書面に該当するか否かを判断することができるもの
と解するのが相当である。したがつて、前示のとおり、本件土地の一部が事実上分
割占有されている状態であり、また、申請外会社の操業に対し、従来何らの紛争も
生じていなかつた本件において、このような客観的事情を前掲契約書及び「本件証
明書」と総合するときは、右書面をもつて「権限を示す書面」に該当するとした処
分庁の判断は、これを是認ずることができるというべきである。
三 以上のとおり、処分庁が申請外会社に対してした本件認可処分には、申請人が
主張するような違法、不当な点はないから、本件裁定申請を棄却することとし、主
文のとおり裁定する。
昭和五十六年十二月十七日
公害等調整委員会裁定委員会
裁定委員長  K
裁定委員   L
裁定委員   M

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