弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

          主      文
    1 原判決中,原審甲事件の予備的請求に係る訴えを却下した
     部分を取り消す。
    2 上記取消し部分につき,本件を千葉地方裁判所に差し戻す。
3 控訴人らのその余の控訴をいずれも棄却する。
4 前項に関する控訴費用は控訴人らの負担とする。
          事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 原審甲事件(以下,単に「甲事件」という。)
  (1) 主位的請求
   ア 被控訴人が控訴人Aに対し,平成14年8月21日付けでした
    公文書部分公開決定中,原判決別紙非公開部分の記載内容一覧表記載の部
    分を非公開とする部分が無効であることを確認する。
   イ 被控訴人が控訴人B,同C及び同Dに対し,平成
    14年8月21日付けでした各行政文書部分開示決定中,原判決別紙非公
    開部分の記載内容一覧表記載の部分を非開示とする部分が無効であること
    を確認する。
  (2) 予備的請求
   ア 被控訴人が控訴人Aに対し,平成14年8月21日付けでした
    公文書部分公開決定中,原判決別紙非公開部分の記載内容一覧表記載の部
    分(ただし,文書番号13,25及び26を除く。)を非公開とする部分
    を取り消す。
   イ 被控訴人が控訴人B,同C及び同Dに対し,平成
    14年8月21日付けでした各行政文書部分開示決定中,原判決別紙非公
    開部分の記載内容一覧表記載の部分(ただし,文書番号13,25及び2
    6を除く。)を非開示とする部分を取り消す。
 3 原審乙事件(以下,単に「乙事件」という。)
  (1) 控訴人Aが原判決別紙非公開部分の記載内容一覧表記載の文書に
   ついて平成12年9月22日付けでした公文書公開請求に対し,被控訴人が   公開決定を行わないことが違
法であることを確認する。
  (2) 控訴人B,同C及び同Dが原判決別紙非公開部分の
   記載内容一覧表記載の文書について平成13年9月24日付けでした行政文
   書開示請求に対し,被控訴人が開示決定を行わないことが違法であることを   確認する。
 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
 1 事案の概要は,原判決の「事実及び理由」第2の冒頭に記載のとおりであり,控訴人らが被控訴人に対し,千葉
県公文書公開条例(旧条例)又は千葉県情報公開条例(新条例)に基づき,被控訴人が各県立高校から受け取った学校
調査に関する文書の公開(開示)を請求したところ,被控訴人は,上記文書は条例の定める非公開理由に該当するとし
て公開しない旨の決定をし,その後,これを取り消した上,上記文書の記載内容の一部を公開しない旨(それ以外の部
分は公開する旨)の決定をしたので,控訴人らが被控訴人に対し,①主位的に,上記文書の一部を公開しない旨の決定
が無効であることの確認を,予備的に,同決定の取消しを求め(甲事件),②控訴人らの公開(開示)請求に対し被控
訴人が公開(開示)決定を行わないことの不作為の違法確認と不法行為に基づく損害賠償(慰謝料5万円)を求めたも
のである。
   原審は,控訴人らの甲事件の予備的請求に係る訴え及び乙事件の訴えをいずれも不適法として却下し,甲事件の
主位的請求をいずれも棄却したので,控訴人らが原審の判断を不服として控訴した。なお,控訴人らは,乙事件のうち
不法行為に基づく損害賠償請求に係る訴えが却下された部分については不服申立てをしていない。
 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,原判決の「事実及び理由」第2の1及び同2の(1)ないし
(3)に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3 判断
 1 本件各新非公開決定の無効確認を求める訴え(甲事件の主位的請求に係る訴え)について
  当裁判所も,控訴人らの甲事件の主位的請求に係る訴えは理由がないので棄却すべきものと判断するが,その理
由は,次のとおり付加し訂正するほか,原判決の理由説示(「事実及び理由」第3の1)と同一であるから,これを引
用する。
 (1) 原判決20頁17行目末尾に次のとおり加える。
   「すなわち,文書の公開請求に対し,行政庁が非公開決定をした後,その決定を取り消すということは,通常の
場合,当該文書の公開に応ずることを意味するから,行政庁が非公開決定を取り消したにもかかわらず,その後,文書
の一部につき再び非公開決定をするということは,取消決定と矛盾するのみならず,いったん請求者に対して認めた公
開の利益を奪うものであるから,原則として許されない。しかし,本件各取消決定及び本件各新非公開決定等がされた
経緯・理由は,上記のような場合と異なるのであって,前記のとおり,被控訴人は,本件各非公開決定後に新たに生じ
た県立高等学校再編計画の作成という事情により,本件公開請求文書が旧条例11条7号及び8号所定の非公開理由に
該当しなくなったため,本件公開請求文書のうち同条2号に該当する部分を除いたそれ以外の部分を公開することと
し,本件各非公開決定を撤回する本件各取消決定をした上で,同日付けで,改めて本件各新非公開決定等をしたもので
ある。そして,前記のとおり,本件各取消決定の通知に記載された理由中には,本件公開請求文書を「個人情報(第2
号)を除き公開することとした」と記載され,同日付けで本件各新非公開決定等がされたのであるから,本件各取消決
定により,被控訴人が本件公開請求文書の全部を公開するとしたものでないことは明らかである。すなわち,本件各取
消決定と本件各新非公開決定等は,いわば一体として理解すべきものであって,これを実質的にみれば,本件公開請求
文書の全部を非公開とした本件各非公開決定の一部を撤回し,本件公開請求文書のうちの一部につき公開を認めたもの
であるから,そのこと自体は,控訴人らの利益になるものであっても,不利益を及ぼすものではないというべきであ
る。」
  (2) 原判決20頁22行目から22頁9行目までの全部を次のとおり改める。
   「なるほど,上記のとおり,本件各取消決定と本件各新非公開決定等は,これを実質的にみれば,本件公開請求
文書の全部を非公開とした本件各非公開決定の一部を撤回し,本件公開請求文書のうちの一部につき公開を認めたもの
であるから,本件各非公開決定の全部を取り消すまでの必要はなく,その一部(旧条例11条7号及び8号に該当する
として非公開とした部分)を撤回するにとどめるという方法をとることも可能であったと考えられる。おそらく,被控
訴人としては,本件各非公開決定が,本件公開請求文書が旧条例11条2号,7号及び8号の非公開理由に該当するこ
ページ(1)
とを理由としていたため,本件公開請求文書のうち同条2号に該当する部分のみを非公開とする一部取消しの決定をす
ることは,非公開の理由が異なることになるという考えから,いったん本件各非公開決定の全部を取り消した上,改め
て本件各新非公開決定等をしたものと思われるが,その妥当性には疑問の余地がある。しかしながら,そうだとして
も,上記のとおり,本件各取消決定と本件各新非公開決定等は,これを実質的にみれば,本件公開請求文書の全部を非
公開とした本件各非公開決定の一部を撤回し,本件公開請求文書のうちの一部につき公開を認めたものであり,控訴人
らの利益になるものであっても,不利益を及ぼすものではないから,上記各決定を取り消さなければならないほどの重
大な手続上の瑕疵があるとまでいうことはできない。したがって,控訴人らの上記主張も,採用することができない。

 2 本件各新非公開決定の取消しを求める訴え(甲事件の予備的請求に係る訴え)について
 前提事実(原判決5頁以下)記載のとおり,控訴人らは本件各非公開決定の取消しを求めて従前の訴えを提起し
たが(訴えの提起は平成14年7月10日),その後,被控訴人が平成14年8月21日付けで本件各取消決定及び本
件各新非公開決定等をしたため,控訴人らは,平成15年1月16日,本件各新非公開決定の無効確認及び取消しを求
める訴え(甲事件)を追加的に提起し,同月24日,従前の訴えを取り下げたものである。そして,甲事件のみについ
ていえば,その訴えの提起時点において,出訴期間(3か月)を経過していたことは明らかである。
   しかしながら,上記のとおり,本件各取消決定と本件各新非公開決定等は,これを実質的にみれば,本件公開請
求文書の全部を非公開とした本件各非公開決定の一部を撤回したものであり,従前の訴えと甲事件の予備的請求に係る
訴えは,被控訴人が本件各取消決定の一部撤回という方法をとらず,上記のような決定方法をとったため,取消しの対
象となる行政処分が形式的に異なる結果となったにすぎない(被控訴人が一部撤回の方法をとった場合には,請求の趣
旨を訂正すれば足りたものである)から,甲事件の予備的請求に係る訴えは,出訴期間の関係においては,従前の訴え
提起の時から既に提起されていたものと同様に取り扱うのが相当である。そして,前提事実によれば,従前の訴えは出
訴期間の遵守に欠けるところがなかったのであるから,甲事件も同様というべきである。
 そうすると,甲事件の予備的請求に係る訴えが出訴期間経過後に提起されたことを理由に,これを不適法として
却下した原判決は,違法であって,取消しを免れない。
 3 被控訴人が本件各公開請求に対して公開決定をしないことの不作為の違法確認を求める訴え(乙事件)について
 当裁判所も,上記訴えは不適法として却下すべきものと判断するが,その理由は,原判決の理由説示(「事実及
び理由」第3の3)と同一であるから,これを引用する。なお,原判決が,乙事件のうち不法行為に基づく慰謝料の支
払を求める訴えを却下した部分については,控訴人らの不服申立てがないので,同部分は当審の審判の対象外である。
 4 以上のとおりであるから,原判決中,甲事件の予備的請求に係る訴えを却下した部分を取り消した上,民事訴訟
法307条本文を適用して,同部分を原審に差し戻すこととし,控訴人らのその余の控訴はいずれも理由がないので棄
却することとし,主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第10民事部
          裁判長裁判官   大  内  俊  身
             裁判官小  川     浩
             裁判官   大  野  和  明
ページ(2)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛